ひのえ

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貴方は自分を風に例える
キザなやつだなと思うが、実際そうだった
掴みどころがなく、澱みなく、
そして何より自由で、止まることがなかった

放浪の旅人のようなものなんだろう
多分ずっと、一生そうとしか生きられないんだろう

私は港だった
夜霧の中で彷徨う船でもある
昏い霧を独り揺蕩う者であり、
あるいは帰り着くものを待つだけの人間だ

風が帰り着くのを待ち続けたが、
時折髪を梳くように流れるだけで
ついぞ私の側に寄り添うことはなかった

風に乗れたならよかったんだろうと思う
帆を張ってゆく船であれば良かったのだろうか
あいにくと私に張れる帆はなかった
ただの小舟でしかなかった

あるいは鳥ならば良かったろうか
どこまででも共に行けたろうか

けれど彼が風としてしか生きられないように、
私は夜の霧に霞む港として、
あるいは船としか生きようがなかった

私は今日も風を待っている









お題:風に乗って

4/30/2024, 2:13:19 AM