8/15/2025, 8:08:42 AM
「あなたは反射するもの」
グラデーションの墨色に、ひとつだけ淡い色。
私の描いた絵を見て、彼が呟く。
「あの風景、君にはこんな風に見えているんだな」
あのとき、私は気づいたのだ。
なぜ、彼と一緒にいる時に風景が違って見えるのか──ということに。
「非常に興味深い」
自身の顎を撫でながら、彼は頷く。
「君の見る世界がどういうものか、僕に見せてくれないか」
息を呑み、彼の顔を見つめる。
「その……これからもずっと」
頬を染めながら付け足した一言に、胸が詰まる。
それって、それって……
────君が見た景色
2025.08.14.
8/14/2025, 8:19:22 AM
「だから僕は今日も本を開く」
たぶん、自分はいわゆる『普通』ではない。そういう自覚はある。
多くの人が『言葉にしなくてもわかること』がわからないのだ。
胸の奥の疼くような感覚や、身体を流れる血がフツフツとするような感覚。
今まで味わったことのないものばかり。
『普通』に少しでも近づきたい。
そうしたら、あの子の考えていることがわかるかもしれない。
────言葉にならないもの
2025.08.13.
8/13/2025, 8:37:05 AM
「今はもう水の底」
自分よりも背の高い黄色い花。
揺れるそれを掴みたくて、肩車。
菜の花よりも大きな花。
もくもく白い雲。
真っ青な空。
今はもう水の底。
「見せたかったなぁ」
君にもこの子にも。
今はもう水の底。
似た景色は日本中、何処にでもある。
だけど、同じ景色は無い。何処にも。
今はもう水の底。
────真夏の記憶
2025.08.12.
8/12/2025, 9:04:35 AM
「抗議する理由はふたつ」
名を呼ばれたので、彼の方へ顔を向ける。
隙をつくように重ねられた唇。
「じゃあ、予告すればいいのか?」
いやいや、そういう問題じゃない。
────こぼれたアイスクリーム
2025.08.11.