小絲さなこ

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4/25/2024, 2:42:45 PM


「忘れてもいいから」



生まれて間もない頃から数年。
自分の子供ではないけれど、自分の子供のように育ててきた。
明日でお別れだ。

まだ幼いから、きっと私のことなど忘れてしまうだろう。

私とは本当の親子ではないことを、この子は知っている。
そして、本当のお父さんとお母さんを求めていることも。

正直言って、本当の親に返したくはない。
あの人たちなんかより、私の方がこの子を愛してると思う。

だけど、この子が血の繋がりのある親を望むのなら……



どうかこの子が自分らしく幸せに生きていけますように。

どうか、どうか、あの人たちがちゃんと親としての愛を注いでくれますように。


どうか、どうか幸せになって。

私のことを忘れてもいいから。






────流れ星に願いを

4/24/2024, 2:48:01 PM



「遠距離恋愛の三つのルール」



一言でもいいから一日に一度は連絡すること。
何かあったら遠慮せず相談すること。
絶対に自分たちは大丈夫だと信じること。


遠距離恋愛開始と同時に決めた三つのルール。


遠距離恋愛が終わって、戸籍をひとつにしてからも、そのルールは継続中だ。

そして、俺たちの話を聞いた娘もまた、遠距離恋愛中のルールを定めた。
色々あったようだが、その遠距離恋愛も、もうすぐ終わる。
婚姻届の証人欄に記入して呟く。


「ほら、大丈夫だっただろ」




────ルール

4/23/2024, 1:58:50 PM

「いつものバス」



変な寝癖が直らなくて、憂鬱な朝。
いつもの時間、いつものバスであの人を見かける。
いつもなら、一瞬だけでいいからこっちを見てほしいと思うけど、今朝は見ないで、と思う。


わたしのちっぽけな願いは、いつも叶わない。

なんで今日に限って目が合うかな……

 
顔を逸らし、髪に触れる。

名も学年も知らぬあの人。
知っているのは、あの学校の生徒だということだけ。

 
灰色の厚い雲。
一箇所だけ切れていて、青い空が見えている。


────今日の心模様

4/22/2024, 2:59:21 PM


「君を奪いたくても」


好きになる順番とか、理由とか、そんなこと考えたこともなかった。

気がつくと、それは棲みついていて根を張っていたから。

出会ってしまったこと、それが原因だったのかもしれない。


子供の頃に出会っていたとしても、きっと好きになっていたと思う。


好きになるのに理由なんてない。
誰かが言うその意味がやっとわかったけど、わかりたくなかった。



なぜ、あんなヤツと君は付き合っているのだろう。
奪ってしまえるのなら、奪ってしまいたい。
だけど、奪えるような君でいてほしくないとも思う。

それでも、万が一の機会を伺っている自分に嫌気が差す。



────たとえ間違いだったとしても

4/21/2024, 2:38:25 PM

「溢れてしまいそう」



あとどれくらい隣にいられるかを数えて、安心する。
今日も明日もずっとこのままでいられたらいいのに……なんて、決して叶うことのない願い。


この想いは、まだ口にする勇気も度胸も覚悟もない。


気の置けない関係のはずなのに、気を抜けなくなっている。

少しでも気を抜くと、溢れてしまいそうになる。

気づかないでほしい。
でも、本当は知っていてほしい。
だけど、やっぱりこのままでいい。
ぐるぐると思考は回る。
そして、行き着く先は現状維持。


まだ、このままでいい。
まだ、この気持ちは抑えられる。

だからまだ……



────雫

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