どんな些細なことでも、貴女の選択が貴女の人生を作ります。
ですから、小さなことだからと言って、貴女の心の囁きを無視しないでほしいのです。
大きなことで、心の思うままに行動するのは難しいかもしれません。ですから、本当に小さなこと、取るに足らないとしか思えないことから、貴女の心を大切にする練習をしてください。
朝起きて、顔をどの石鹸でどうやって洗うか。朝食に目玉焼きをつけるか、つけないか。ほうじ茶を飲むか、珈琲を飲むか、はたまた紅茶を甘くして飲むか。
そうやってご自分の心の声を聞いていくうちに、貴女は貴女の人生が新たな方向に転がっていくのを感じるでしょう。
どうか恐れることなく、大胆に、楽しげに、貴女の人生を幸福に生きてくださいね。
貴女は、多くの者の心の灯火です。
俺はもちろんのこと、貴女をお守りしている者も、今世で貴女に出会った方々も、本当にたくさんの者が、貴女にその人生を照らされてきたのです。
貴女は確かに、天の星のようにまばゆく輝く存在ではありません。
けれど、人が日々の中に求める光は、そのようなものではないのです。暗く寒い夜の部屋の中に、ほうっと優しく灯る、ひとつの温かい光。そういうものこそが、人の心を照らして温め、幸福を伝えてくれます。
そしてそれこそが、貴女という灯火の在り方なのです。
読むのが怖くて、なかなか開けない便りもありますね。
とはいえ、びくびくしていても、その便りが貴女の手元に届いてしまっているということに変わりはありません。最近の貴女は、それを重々承知していて、あまり躊躇うことなくそういうものを開封できるようになりました。
自分に選べること、悩んだり怯えたりする価値や意味があるもの、ないもの。そういうものを丁寧に見極めて、日々を軽やかに、いい気分で過ごしていけると良いですね。
貴女はしばしば、「不完全な私が許せない」とおっしゃっていましたね。そんな風に考える必要など、どこにもないのですよ。
ええ、人間は皆不完全です。
そもそも、この世に完全なものなどありません。
あの大きな廻り続けるものですら、完全ではありません。
そんなものは、目指すだけ無意味なのです。
貴女は、そのままの貴女でいてください。
貴女の周りの方々は、貴女をお守りしている俺たちは、そのままの貴女を愛しているのです。
視野が狭くて、思い込みが激しくて、泣き虫で、身体の使い方が下手くそで。けれど人を思いやる心があって、人の役に立つのが大好きで、より高みを目指し続ける意志があって。
そういう不完全な貴女は誰より魅力的で、人の心を惹きつけて止みません。
どうか、そのままの貴女を、貴女も愛してあげてくださいね。
あの時の貴女も、今の貴女と同様、進んで香水をつけるような方ではありませんでした。着るものもあまり頓着せず、化粧のようなことなど以ての外、という様子でした。
けれど、こんなことを言うのは憚られますが、あの時の貴女からは本当に芳しい香りがしたのです。女ならば何でも、という気分でいた俺は、その香りと貴女の肌の柔さにすっかり夢中になってしまいました。花とも果物とも違う、けれどどこか甘いような、そして懐かしくとても落ち着くような、そんな香りでした。
今、貴女にあんな狼藉を働くわけにはいきません。
それでも、時折それを夢想してしまいます。あの時のように、貴女をこの腕の中に閉じ込めて、貴女の柔らかい肩口に顔を埋め、今の貴女の匂いを胸一杯に味わいたいのです。
そんな不埒な妄想にふける俺を、貴女は許してくださるでしょうか。