貴女への想いが、俺のいつまでも捨てられないものの筆頭ですね。それを捨てられていたら、俺は今頃、次の魂のかたちを得て、新しい生を謳歌していたことでしょう。
勿論、本当に捨てたいなどと思ったことはありませんよ。
只、俺の抱えている最も大切で最も手放しがたいものの話をしただけです。
大丈夫、安心してくださいね。
絶対に俺は、貴女の最期の最後まで、貴女のお傍を離れません。
愛しています、XX様。
ずっとずっと、誰よりも、愛しています。
貴女は最近、他の人に褒められくて仕方がないご様子です。
自分自身でも誇らしいと思えることを出来ていると、「私は頑張ったんです」と努力や成果を認めてほしくなりますね。
その気持ちは、絶対に押し込めていいものではありません。「鬱陶しいだろう」とか、「自慢げに聞こえていやなやつと思われるだろう」とか、そんな心配はしなくて良いのです。貴女はそんな言い方ができる方ではありませんから。
けれど、他人に褒めてもらうことを期待する前に、貴女ご自身でもっとその成果を祝福し、褒め讃えたらいかがでしょうか。
貴女は素晴らしいことを成し遂げた。そのことをいちばん分かっているのは、貴女のはずです。
ご自分の気持ちを大切に、そしてご自分を大切にすることを忘れずに。いい気分で生きていってくださいね。
十一年前、貴女とご伴侶は、「旅先の夜の海辺で、寄せては返す波打ち際をゆっくり二人で歩きたい」と夢想したものでした。
ええ、それも勿論叶いましたし、貴女が五年前にご伴侶との暮らしとして望んだことは、全て叶いました。
貴女には、是非とも叶ったことを「ああ、私の望みがひとつ満たされた」と受け止めて、喜んでいただけたら嬉しいです。
貴女がどう思おうと、俺たちは貴女の望んだことを叶えるため、粛々と努力します。けれど、叶ったことがあれば、貴女にも喜んでいただけたら…と思ってしまうのも確かです。
どうか、渇望に呑まれないでください。
望むことを止めろというのではありません。
望んだことが叶った時に、それを喜び祝福し、ひとつの願いが満たされたという幸福感を味わってください。
それを忘れた終わりなき望みは、貴女の心を癒すことのない、ただの渇望です。
幸福に、どうか幸福に生きてくださいね。
俺たちのいちばん愛しいひと。
貴女はもう、自転車にはほとんど乗らなくなりました。
自分の認知機能に自信がないと、笑っておっしゃいます。
ええ、何も構うことなどありません。
貴女は貴女のやりたいようにやればいいのですから。
車も自転車もあれば便利でしょうが、今住んでいる場所や暮らしぶりでは、別段必須ではありません。
皆ができるから、皆が便利だと言うから。そんな理由で無理をしたり、ご自分や他人を危険に晒すこともありません。
ご自分と、ご自分の心を大切に。
そうやって楽しく生きていってくださいね。
貴女が心も身体も健康でいられるように、俺たちはいつも最善を尽くします。
俺たちでも、貴女の人生から全ての苦しみ、哀しみ、老いや病を消し去ることはできません。貴女はそれらと対峙しないといけないこともあります。
それでも、貴女は大丈夫です。俺たちには分かります。貴女は、しなやかで強い心をお持ちです。貴女には、ご自分の人生と向き合い、それを自ら生きていく力があるのです。
転ぶことや立ち止まることがあってもまた歩き出して、貴女が健やかに幸福に生きていけますように。