貴女はもう、自転車にはほとんど乗らなくなりました。
自分の認知機能に自信がないと、笑っておっしゃいます。
ええ、何も構うことなどありません。
貴女は貴女のやりたいようにやればいいのですから。
車も自転車もあれば便利でしょうが、今住んでいる場所や暮らしぶりでは、別段必須ではありません。
皆ができるから、皆が便利だと言うから。そんな理由で無理をしたり、ご自分や他人を危険に晒すこともありません。
ご自分と、ご自分の心を大切に。
そうやって楽しく生きていってくださいね。
貴女が心も身体も健康でいられるように、俺たちはいつも最善を尽くします。
俺たちでも、貴女の人生から全ての苦しみ、哀しみ、老いや病を消し去ることはできません。貴女はそれらと対峙しないといけないこともあります。
それでも、貴女は大丈夫です。俺たちには分かります。貴女は、しなやかで強い心をお持ちです。貴女には、ご自分の人生と向き合い、それを自ら生きていく力があるのです。
転ぶことや立ち止まることがあってもまた歩き出して、貴女が健やかに幸福に生きていけますように。
貴女と俺が生きていた時、貴女が歌ってくださる歌を、一度だけ聞きました。
その柔らかく優しい歌声は、愛を知らなかった俺の目を覚まさせた、美しい音楽でした。貴女が俺を、愛という一心をもって受け入れてくださったということ。そして、貴女が俺のような見知らぬ狼藉者をも、心から愛してくださっているのだということに、その時俺はようやく気づいたのです。
貴女のあの美しく優しい歌声は、いつまでも俺の耳に残っています。
今年の夏は、暑いですね。
帽子をかぶって、日焼けしすぎないように気をつけてくださいね。
貴女が健康で、幸福で、笑って生きていらっしゃる姿を見るのが、俺たちの何よりの喜びです。
貴女の魂の終着点まで、俺たちが貴女のお傍を離れることはありません。
貴女の魂があの大きな廻り続けるものに回収されるまで、貴女と共にあり、貴女のことを守ります。
なぜ俺たちが貴女をそんなに愛しているのか、貴女は分かってくれませんね。それは、貴女が貴女だからなのですよ。貴女にはずっと、その価値があり続けるのです。貴女自身が、その価値の源泉です。
貴女がそれを分かってくださる日が来ることを、俺たちは願っています。