お題『風邪』
若い頃、まだ腐女子になりたてだった時期に推しカプの体調不良の小説やら漫画やらを読んで、
だいたいそういう話ってベタな展開に発展することが多い。だが、そういうのを読んで興奮し、何度も読み返した記憶がある。
今、長年オタクをやってて体調不良ネタよりも萌えるシチュエーションに何度も遭遇したし、内容があるものを好むようになった私は、あまり体調不良ネタを読まなくなってしまった。
だが、推しカプで検索するとサジェストに「体調不良」と出てくるからずっと廃れないネタなんだなと思う。
まぁ、年季が入ったオタクやってる私も気持ちはすごくわかる。
コホコホ咳して、布団の中、熱でほんのり頬を赤らめながら弱っている推しの姿って栄養価高いよね。
お題『雪を待つ』
東京は雪があまり降らない。そのことをお母さんが教えてくれた。
北海道とか、新潟とかが一面の雪景色に包まれているのを見て、なんとなく羨ましいと思ってしまう。
東京の場合は、なんていうか『季節風』が山を越えないと雪が降らないらしい。たしかそう学校の授業で教わった。
前に雪が降った時は、ベランダにちいさな雪だるまを作ったっけ。すぐ溶けちゃったけど。
今年は雪が降るといいな。もしたくさん雪が降ったらかまくらを作るんだ。
お題『イルミネーション』
昔付き合っていた人が言った。
「イルミネーションなんて、毎年一緒じゃん」
って。
たしかにその通りかもしれない。でも、当時の私は『みんなと同じように』『人ごみに紛れて』『彼氏とイルミネーションを見る』という経験が出来ただけで浮かれていたから、その言葉にアハハと笑って返すだけだったと思う。
だけど今はもう恋人たちの群れを見てもなにも思わない。イルミネーションは元彼が言う通り毎年同じような装飾ばかり。
そんな乏しくなった自分の感性に年齢を感じて、すこしだけさみしい気持ちになるのだ。
お題『愛を注いで』
サークルのメンバーのみんなにカップケーキを作ることにしたの。
クリスマスパーティーに持っていってみんなで食べられるように。
だけど、好きな彼の分だけ特別に私の『愛』をトッピングしてあげる。
食べたら最後、最初に見た相手のことが好きで好きでたまらなくなる薬。
これは絶対に私が彼に手渡ししないといけない。
あぁ、クリスマスがくるのが待ち遠しいなぁ。
お題『心と心』
私達は二人一組の魔法少女だ。今、わけあって絶賛喧嘩中。
おともの妖精がちいさな体を揺らしながら「はやく仲直りしなよー」って慌てている。妖精が慌てるのも無理はない。私達は、手をつながないと変身することができないのだから。
今までも喧嘩はそこそこしたけど、うまくやってきたつもりだ。だけど、相方が一人敵から情報を得るためにこちらを騙すような真似をしていた。
理由は分かっている。でも私はそれがなんだか許せなくて裏切られた気持ちになってお互いに喧嘩してしまった。
もともと性格は正反対だ。学校で所属しているグループもまったく違う。
(もう、今回ばかりは仲直りは無理かぁ)
そう思ってベッドにうつぶせになりながら横になっていた矢先、突如として轟音が響いた。
敵襲だ。急いで向かわないと! おともの妖精を連れて急いで家を出る。
現場に着いた頃、私は目を疑う光景を目にした。
相棒がぼろぼろの姿になりながら敵に立ち向かっているのだ。敵に蹴り飛ばされては地面を転がり、それでも立ち上がって突進する。
だが、私が知ってる限り彼女の運動能力は高くない。頭が無駄にいいだけのネクラ女だ。
仲直りは無理とか言ってる場合じゃない!
また彼女が敵に弾き飛ばされた時、私はそれを受け止める。意外と衝撃が強く、尻をすりむいた。
割れたメガネ越しに相棒が私を睨む。そのくせ口許はすこしだけつり上がってる。
「あんたとは一緒にやっていけない、じゃなかったの?」
その冷たい言い方、相変わらずムカつく。だけど
「そんなこと言ってる場合? あんたすっかりボロボロじゃん」
「なに泣いてんの」
「はぁ? 泣いてないし!」
と言いながら私は涙をぬぐう。やっぱり仲間が一人で戦ってるのを見過ごせないし、それに、このままなのは嫌だ。相棒がため息をつく。
「感情的なの本当にメンドクサイ」
「あんたは相変わらず冷たいよね」
それからしばらく顔を見合わせて私が「ごめん」と言うと、「私こそ……その、ごめん」と相棒が返す。
たった一言。私たちの間にわだかまりはもうない。敵が大きな口を開けて電磁波をお見舞いしようとしている。
私達は手をつなぐと、二人心を通わせ、すぐさま戦うために姿を変えた。