白糸馨月

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お題『心と心』

 私達は二人一組の魔法少女だ。今、わけあって絶賛喧嘩中。
 おともの妖精がちいさな体を揺らしながら「はやく仲直りしなよー」って慌てている。妖精が慌てるのも無理はない。私達は、手をつながないと変身することができないのだから。
 今までも喧嘩はそこそこしたけど、うまくやってきたつもりだ。だけど、相方が一人敵から情報を得るためにこちらを騙すような真似をしていた。
 理由は分かっている。でも私はそれがなんだか許せなくて裏切られた気持ちになってお互いに喧嘩してしまった。
 もともと性格は正反対だ。学校で所属しているグループもまったく違う。
(もう、今回ばかりは仲直りは無理かぁ)
 そう思ってベッドにうつぶせになりながら横になっていた矢先、突如として轟音が響いた。
 敵襲だ。急いで向かわないと! おともの妖精を連れて急いで家を出る。

 現場に着いた頃、私は目を疑う光景を目にした。
 相棒がぼろぼろの姿になりながら敵に立ち向かっているのだ。敵に蹴り飛ばされては地面を転がり、それでも立ち上がって突進する。
 だが、私が知ってる限り彼女の運動能力は高くない。頭が無駄にいいだけのネクラ女だ。
 仲直りは無理とか言ってる場合じゃない!

 また彼女が敵に弾き飛ばされた時、私はそれを受け止める。意外と衝撃が強く、尻をすりむいた。
 割れたメガネ越しに相棒が私を睨む。そのくせ口許はすこしだけつり上がってる。
「あんたとは一緒にやっていけない、じゃなかったの?」
 その冷たい言い方、相変わらずムカつく。だけど
「そんなこと言ってる場合? あんたすっかりボロボロじゃん」
「なに泣いてんの」
「はぁ? 泣いてないし!」
 と言いながら私は涙をぬぐう。やっぱり仲間が一人で戦ってるのを見過ごせないし、それに、このままなのは嫌だ。相棒がため息をつく。
「感情的なの本当にメンドクサイ」
「あんたは相変わらず冷たいよね」
 それからしばらく顔を見合わせて私が「ごめん」と言うと、「私こそ……その、ごめん」と相棒が返す。
 たった一言。私たちの間にわだかまりはもうない。敵が大きな口を開けて電磁波をお見舞いしようとしている。
 私達は手をつなぐと、二人心を通わせ、すぐさま戦うために姿を変えた。

12/12/2024, 2:57:50 PM