お題『あの頃の私へ』
クラスで孤立していじめられてて、家でも誰も私のことを理解してくれなくて、ネットにしか居場所がなかった小学生の頃の私へ。
今、孤独にうちひしがれても何年も経てば意外と大丈夫。
自分で友達いないことがまずいと思って、大学になってようやく必死に友達作って今も付き合いがある親友が出来て、あと恋愛も経験するから今がさみしくてもきっと大丈夫。
あと、貴方はもともと一人で遊ぶのが得意だったけど、大人になったら一人でなんでも楽しめる人になるので一人でいることを辛く思わないで欲しい。
大人になったらお金稼ぐようになって、時々一人で旅行行ったり、一人でライブ行ったりするようになるから。
お題『逃げられない』
やっと一つの作業を終えた。一段落して脱力しているところで、俺の目の前に資料の山がドンッと置かれる。
俺に仕事を押し付けやがる直属の上司は広角をニタァと上げる。
「山田くん、これ、今日までだからお願いね。君、仕事はやいからいけるっしょ」
「は、はい……」
「んじゃ、ヨロピクー」
それからその足でスキップしながら女性社員連れて出ていく。俺は震える手で上司に押し付けられた資料の一つを握りしめた。
「逃げられないのかよ、クソが……」
人がほとんどいない社内で小声で呟きながら俺は仕事にとりかかり始めた。
お題『また明日』
「また明日」
そう言って僕は友達と別れた。また明日も会えるって信じてるからいつだってそうして、毎日学校で会ってバカ話して、一緒に帰って別れる。これの繰り返しがずっと続くと思ってた。
親から友達が事故に遭ったと聞いた。塾行く途中、自転車で走ってたら車にはねられたらしい。
僕は友達が入院してる病院を聞いて、すぐに自転車を走らせる。友達のことを思うとやりきれなくて、涙と鼻水が止まらない。
頼む! 生きててくれ! また明日だって学校行くんだろ!
無我夢中で友達がいるところへ、僕はペダルを漕ぎ続けた。
お題『透明』
地下アイドルのライブ後の接触イベントの後、日課にしていることがある。
私には、物心ついた時から透明人間になれる能力がある。おとーさんや、おかーさんはちがうけどおばあちゃんもそうだったからきっと隔世遺伝ってやつなんだろうね。
一人暮らしをはじめてから家賃と食費と、自分の身を出来るだけ安いお金でかわいくすること以外は推しに費やしてる。推しのライブは全通だし、接触イベントにもすべて参加してる。多分認知もされてると思う。
だけどそれだけじゃ足りなくなって、私はライブ終わった後、透明人間になって推しの後をつける。
ある時はメンバーと打ち上げをしてる時もあれば、そのまま直接家に帰っている時もある。ドアを閉められても私は壁を通り抜けることが出来るから、推しの部屋の中に入ることもできてしまった。
そこでわかるのは、推しはメンバー愛にあふれてることと、女性の影がないということだ。部屋に入ればメンバーとうつった大きなポスターが飾られてて、別のLEDが灯された棚ではメンバーのアクリルスタンドがライトアップされて飾られている。
おまけにゲーミングチェアに大きなパソコンのディスプレイが二つあって、いつも推しはここでメンバーとか他のアイドルグループのメンバーとFPSをしたり、かと思えば熱心に曲を作ったりしている。ストイックで男だけで遊ぶのが好きなのが分かる。
横から見て推しが眠るのを見届けた後、私も満足した気持ちになりながら部屋を出る。私も眠って仕事したら、今日はイベントないしエペ開いてランク上げなくちゃ。
今やってることがストーカーだって? いいえ、推し活です。それも透明になれる私だけの特権です。
お題『理想のあなた』
テーブルをはさんで目の前の男を見る。私は今、婚活をしていて、目の前の男を自分の理想にあてはめる作業を頭のなかでし始めた。
まず、髪がもうすこし長ければよかった。社会人は、さっぱりとした短髪がよく、社会的なうけがいいが私が好きなのは今のK-POPアイドルみたいな髪型だ。
あと、眼鏡もやめて欲しい。一定数眼鏡が好きな人はいるけど、私は好きじゃない。カマキリみたい。
あごがたれさがってるのが気になる。もうすこし筋トレをしてくれればいいのにと思う。
そんなことを考えていたら相手男性が
「へぇ、お金がかからないといいですがね」
と眼鏡の鼻のあたりに手をやりクイッと上げた。さっき私が推し活が趣味だといった話の流れだ。
そのとき、私の額に青筋がうかぶ。
(理想に合わないどころか、感じ悪っ。最悪)
私は心のなかで目の前の男にバツ印をつけた。