お題『突然の別れ』
『別れてくれる?』
突然、付き合っていた人間からこんなLINEが来ても私の心はいつもと変わらなかった。
そいつは、街コンで一番マシな男を選んだ結果、たまたまカップリングになり、一回しかしてないデートで「好きなんだ」と告白されて、特に断る理由がないから付き合った人だ。恋愛感情なんて一ミクロンたりともなかった。
それが付き合ったら、いきなり手を繋いできたからその距離の縮め方にびびった。正直、居心地が悪かった。
何度かデートして、やはり展開が早かった。昨日もデートしていた。
そんな男が急にさっきみたいなLINEをしてきたのだ。
すぐに気持ちが盛り上がる男だからさめるのも早いのだろう。
「やっぱ、その程度の男か」
別れた理由は、どうでもいい。ただ彼氏が欲しいだけで付き合った男だから。私は、返信もせずLINEを閉じた。
お題『恋物語』
「私、今狙ってる男がいるんだよね」
とか
「えぇーん、彼氏が浮気したのぉ」
とか
「私、今度結婚するんだよね。もう七年も付き合ってるからねぇ」
とか
そういった話を聞くたびに私には縁のない話だなぁと、聞いている。私には恋愛経験がないし、そもそも恋心が湧き上がった経験がない。私にとって『恋』は、物語みたいに空想じみてるものだ。知らない世界の話を聞くために私は今日も友達の恋物語を聞くのだ。
お題『真夜中』
スマホでGoogleのページを開いて連想ゲーム的にさまざまなワードを検索する。私の真夜中の悪しき日課だ。
たとえば
推し 人気ない
から始まり、推しが人気ないことに対するブログの記事を読んで心の持ちようを模索していたら、気になる漫画の広告が目に入ったのでそれをクリックして、試し読みで読んだら今度は
漫画のタイトル ネタバレ
と検索して、ネタバレをあさって内容を把握したつもりになり、今度はそのサイトで目についた広告をクリックして新しい作品の試し読みを読んで、またネタバレを探す。
そうしているうちにスマホの時刻を見ると午前二時になろうとしている。
眠気が訪れそうにないので今度は
眠れない時 対策
と検索する。何度も検索してるから、「ね」と打った瞬間、まっさきに出てくる。
方法なんて知ってる。スマホを手放せばいいんだ。なのに、こうしてどんどん検索ばかりして時間を浪費するからいつだって寝不足になるんだと自己嫌悪になる。だけど、スマホをいじってないとベッドの上が退屈で仕方ないし、なにより一日の充足感が得られないのである。
お題『愛があれば何でもできる?』
私達は「好き」という感情だけで突っ走って結婚した。
ライブハウスで歌う彼は本当にかっこよくて、輝いていて、自慢の彼氏だった。そんな人の彼女である自分が好きだったし、そんな人の子供を身籠って結婚できたことが幸せだった。
私達は、お金がなかったから結婚式をあげられなかったし、新婚旅行にも行けなかったけど幸せだった。
でも、愛があれば何でもできるわけじゃないことを知った。家事を一向に手伝わず、ギターの機材や自分の服装や髪型にお金をかける彼。始めはそれがかっこよかったはずなのに今ではそれがなんとも腹立たしい。
そういえば、近所に住んでる馬鹿にしていた地味な同級生が結婚したって。同じように地味な男と結婚相談所を使うしかなかった。最初はそいつのことを笑ってたのに、今では私よりも綺麗な服を着て、夫婦と子供と一緒に歩いてる。そういえば某有名私立大学附属の小学校にお受験で入れたんだっけ。それが腹立たしい。
私は、食器を洗っている。手はもう荒れ放題。何年やっても売れなくて家にいるだけで子供の面倒も見ず、煙草を吸いながらテレビを見るだけの男を見ながら奥歯を噛み締めた。こんな男でも私が好きになった男だから最期まで面倒を見るしかない。
『愛さえあればなんだって乗り越えられる』
その言葉をよすがにして地面を踏みしめるだけで精一杯だった。
お題『後悔』
思えば後悔することばかりの人生だった。
たとえば、友達と喋ってる内容が今思うとその友達を傷つける内容だったと思う時、
たとえば、好きな人がいてその人から「好き」と言われたけど、好きな人と私とじゃスクールカーストが違いすぎて断った時、
たとえば、大学のサークルの飲み会でお酒を飲み過ぎて失態をおかした時、
時々それらを思い出すだけで、頭を抱えたくなり、ひどい時は死にたくなることもある。
だが、それでも生きていかなくちゃいけない。私に出来ることは、それらから目を背けて生きることだけなのだから。