涙の理由
涙が出なくなってから、どんどん頭がぼんやりして、全ての輪郭が曖昧になった
次第に傷つく事も減って、楽になって、次第に私の世界がボロボロと欠け落ちて、それを止めようとも思えなくて
ある時空っぽになった
別に悲しくない、私には悲しみはいない
だから
最後の時もテキトーで
なんとなく目の前が真っ暗になって
普通に電車に乗ろうと、足を踏み出して、そのまま私は終わった
もっと早く、自分の辛いを受け入れていたら、ちゃんと涙が流れていたら、私は生きていたのかな
だって、涙は傷ついたことを受け入れるために流すのだから
声が聞こえる
夜、カップ麺とエナドリをコンビニで買った
トイレで済ませて、店を出る前、少女とすれ違った
髪はボサボサ、肌もカピカピで、見るからに普通ではなかった
その少女が気になり少し見ていると、少女は缶ビールを持っていたエコバッグな入れた
運悪くそれが店員にバレ、連れていかれそうなところを、俺は咄嗟に少女の手を引いて、走り出した
しばらく走った公園で、少女と俺は仲良くなった
深くは聞かなかったが、少女は親に虐待されているようだ
その時は性欲を抑えるのに必死で、よく話を聞いていなかった
朝日が昇って、俺と少女は解散した
少女は別れ際に、拙い声で、「ありがとう...」と言った
後日、少女は親に虐待されて死んだ
その日からずっと聞こえるんだ
「ありがとう」が
大事にしたい
そう思った頃には、もう遅かった
それを当たり前に蔑ろにしたツケは、ある日突然やってきて
私の全てを壊した
それを大事にしていては、自分は真っ当になれないからと、SOSを無視し続けていた
だから、
今の私は、もう味も色も感じられない
全て壊れてからじゃ遅いから
大事にしたい
あなたの心は、唯一無二だから
時間よ止まれ
別にいいんだけど
もうどうでも良くなってしまったからさ
全て、ここで止める
世界はどんどん醜くなるし、私はどんどんキモくなるし、周りは仲間じゃないみたいだから
辛いんだ
もう進んでほしくない
だから、
全部止まれ
さよならを言う前に
あっ、どうせなら言っておきたいことがある
手紙はその一文から始まっていた
私、あなたが嫌いだったよ。ずっと前からね
てか小四からゲーム禁止、お小遣いなし、友達と遊ぶの禁止ってたかが隠れてゲーセン行った程度でかす罰?せいぜ一週間でしょ
それで私はあなたが大好きだからあなたも私を愛してって? 無理だよ笑
あの日からあなたを親だなんて思ってないし、尊敬だってしてないし感謝なんかするわけもない
毒親って言葉が流行った時、あんた私に私は毒親じゃないもんね〜って言ったよね、私あの後トイレで吐いてたよ
あんたが毎日自分の憂さ晴らしを私にするから、倒れたことあったよ、あの時に生きるの諦めたんだから
勝手に産んで沢山利用してあんたが殺したんだよ
私はあなたが大嫌い
さようなら
「こんなの、渡せない......」
私は妹の書いた遺書を引き出しにしまい、喪服を見に纏い車に乗った
「私にも言わなかってことは......」
嫌な想像は目を背ける間もなく私の頭を支配した
「産まれたくなんてなかった......」