「星空」
丸い月、餅をつく兎。
ガラス越しにでもくっきりと見えるほど、まるい月。真夜中を指す時計を嗤う様に、月が上り始めた頃と同じくらい明るい空。
街灯やコンビニの灯りを凌駕する真白い熱は夜空を見る者を満足させ、禍々しい暗い空を一転させる。
目も慣れれば、か細い光もよく拾い夜空を星空に魅せていく。
「神様だけが知っている」
風で鳴る葉、痛いほど照りつける陽、パラパラ光る海水、照らされて紅のグラデーションになった鳥居、手の形に無くなった水滴がある瓶と缶の酒、適当な飯、誰かが置いていった賽銭。
神に話しかけても、神を幾ら思っても、全知のかけら一つすら知らせて貰えずとも。だとしても。
救いを、報せを、恵みを。何かを求めて神に祈る。
本心からか、何処からか。
「道の先に」
家を出て、真っ直ぐ。
すぐ隣のコンビニも、幾つかの曲がり道も、公園も無視して夜を行く。
雨の音に囲まれ自分以外が居なくなった様な錯覚をしたり、雨が街灯や店の光を滲ませて、いつもより少し明るい様な気がしたり。
いつも見ている店や街灯の水溜まりに反射する光が何故かとても美麗に、新鮮に見えたり。
これで星が見えればなぁ何て、叶わない事を妄想出来る。
家からどれくらい離れたか、雨の日の散歩は心なしか足取りが軽くなって、傘をくるりと回して次へ次へ。
自分が住んでる街なのに、知らない景色を探しに。
雨なのに飛んで鳴く、鳥を探しに。
道の先に期待して、まだもう少し、歩いてみる。
「日差し」
月は頭を垂れ星も帰ってしまった。
空は橙色に染まり始めて、所々青も混ざっている。
夜の影を纏った雲は、まだ少し重い色をして。
鳥が鳴いている。
白くなった電柱の、見えなくなった電線に、鴉が止まって鳴いている。
暗い時間の、死にそうな声では無くて、クァークァーと、朝を知らせる様に鳴いている。
アラームが鳴る。
アラームが鳴って、カラスが鳴って。そうするとじめじめ暑くなり始める。季節にぴったりな、嫌な暑さになり始める。
そして嫌になって起きる準備を始めると、日除のカーテンが風で浮いて。さっきまで静かだった小さな鳥も鳴き始め。
朝を告げる。
暗かった部屋も、隣の家の影になった庭も木も平等に、眩しいくらいの陽を受けた。