小学4年生の頃、トイレの窓ガラスが割られる事件があった。割った犯人について何か知っていることはないかって先生は聞いたけど、誰も答えなかった。
犯人は見つからないままその日は終わった。
帰りの時間が遅くなっただけだった。
その時は、嘘をついている人や隠し事をしている人がすぐに分かるような魔法が欲しいと思った。
中学生の頃は、給食当番で汁物やサラダをつぐことが苦手だった。
もうすぐすべての皿に盛り終わるという時、量が足りなくなって焦ったり、逆に余り過ぎて残ってしまったり。
だから、その時はクラスメイトみんなの皿に、平等におかずを分けられる魔法が欲しかった。
そしたら、無理して給食をおかわりさせられる人もいなくなると思った。
『魔法』6
今までに、綺麗な虹は数回見た。
それはいつも、母と一緒の時だった。
いつかの将来、隣にいるであろう大好きな彼と一緒に見たいなぁ。
『君と見た虹』5
部活終わりの、暗い学校の帰り道。
空を見上げると光る星を1つ見つけた。
指を差しながら、帰りが一緒の友達に「一番星」って自慢げに言ったら「あそこにも星あるよ」って返された。今日は月は見当たらなかった。
星は、沢山の人から綺麗って言われる。
私も綺麗って言われたいから「星になりたい」って零したら、「呼吸できないよ」って返された。たしかに。
『夜空を駆ける』4
地面の奥深くに埋めた大事な手紙。
眼の前のことに夢中だった小学生の頃の自分。
夢、思い出、好きな人への思い、沢山の気持ちを込めた手紙。1枚の薄い紙に、どんな思いが詰まっていただろう。
いつ探しに行こうか、明日、来週、来月、来年、再来年、何年も先。
動かない瞼に、乾いて痛む唇。手の痺れる感覚は全身に伝わってくる。耳元で一定のリズムを刻む、聞き慣れた機械の音。
今日は体が重い。懐かしい記憶を掘り起こすのはまた今度。
『手紙の行方?』3
今日は、なんだか普段より眩しい。
外の景色がよく見える席で、太陽の日差しが直接顔に降りかかっているからだろうか?
いや違う、これは。
そっと顔を上げ、目の前に静かに佇む人物を見つめる。
最近伸ばし始めたらしいとげとげの髭から、唇、鼻、つぶらな瞳、まつげ、細いまゆ。そして僕を強く照らしていたのは……
すべすべの肌で優しく太陽の光を受け止める、先生のつるりとした頭だった。
『先生の輝く頭』2