『星空』
紡いだ言葉を星空みたいに散りばめて
壊れたデータのデバッグみたいに
勝手な星座を見つけて宙に描き出す
だから午前未明も所構わず呼び出して、
互いの記憶を砕いて夜空にばら撒いた
大袈裟すぎる想いの深さを探させて
覗き込んでは見落として
もう無理だぞと何度も伝えて失敗する
ただ笑い者にして痛めつけたかっただけだ
そうこうするうち、
いつの間にか言葉遊びのあや取りだ
このまま羽衣でも織り上げたら
今度は鵲どもを渡って来るか?
お前が望むならいくらでも。だけど一緒に居るだけで幸せになってちゃダメだって、あなたは言う。
前にさ、神様を参拝する時は住所氏名も伝えて願掛けするんだって話を聞いて。神様はたくさんの人間の願いを聞くから、身元がわかんないと取り間違えて叶えちゃうんだって。なのに非力な人間のくせに神頼みもしない奴は傲慢だから天罰するって。そんな理不尽!って思いつつ、神様ってそういう所あるしなぁ…って妙な納得もして。申し訳ないけど私側も何が得意な神様なのかも実はあんまりわかってない。でも、それを聞いてからは無理やり捻り出してお願いしてる。だって天罰嫌だし…。
お互いなかなか適当だよね。私はそれくらいの代わり映えしない日々が欲しいのに、どうやら神様は欲望や野望を欲するものらしい。叶うことより望むことを良しとしてる。そんなふうに人の弱みを集めてしまって、本当のところは望まぬ願いも有象無象じゃ、苦労もするよね。
『神様だけが知っている』
私の道に迷い惑いは必要ない。
そのはずだったのだが、
割り込むように途上に次々現れて、
巻き込まれているうちにな。
どちらも何かと歩みが不得手で行く末曖昧、
奇妙な区切りで散歩と称して行方不明だ。
私だけなら見捨てもしたが、
予想と異なる突飛な未来は
道中を彩り咲く花のように
腹も立つが愉快でもある。
所詮は道など通り道、
その道すがらを愉しむのも悪くはない。
例えそこに私の席はなくとも、
連れ立つことの豊かさに私は深く感謝している。
もっとも私はその間も己の歩を垂らしているから、
うかうかしてるとお前の詰みだが。
『この道の先に』
『日差し』
辛いよな
夏の太陽は高い位置にあるから
どこも影が短くなって日陰が減る
照り返しもきつくなって逃げ場がない
真上から照り付けて陰を奪うから、
そのぶん光の境界は色濃くなって
互いの内にも強い影を落としてくる
その強い明るさに瞳が慣れて竦むから
影の暗さはさらに深まり闇に映るんだ
だから鮮烈で、愛おしいのかもな
『窓越しに見えるのは』
猫と鴉の攻防。
まずね、私は猫を飼ってないの。ちょっと縁あって週末だけ預かることになった猫の話なんだけどね。なかなか大人しくて手もかからない豊かな長毛のムスッとした良い子なの。で、どこ行くのかなって見てたら猫らしく窓辺に座ったの。飼い主のお迎えをそこで待つのね!って私もほっこりして。
窓の外なんて隣家の壁だから狭い空しか見えないんだけど、しばらくしたらバサバサッて音がして。上から鴉が現れて丁度いいでっぱりに足掛けて。で、カァッて一声。そしたら猫がぽーんって弧を描いてバク転した。私もびっくりして。鴉じゃなくて猫に。そのまま風みたいにベッドの下に消えちゃった。
面白いのはそれから次の日も次の日も、猫は窓辺で空を見上げるの。飼い主が迎えに来ても窓辺から離れないって全力で踏ん張るの。鴉が来るのを待ち焦がれて。だけど鴉が来たのは後にも先にもその一度だけってこと。