どうしたの?
そんなに暗い顔して、悲しいことでもあった?
ああ、急に話しかけてごめんなさいね……アタシ、そこの花屋で働いてるの。あなたがさっきからずっとここで俯いてたから、気になっちゃって。お節介だったらごめんなさいね。
あら……この喋り方が気になる?
たしかに変な目で見られることもあるけど、誰にだって個性はあるわ。それに、色んな個性があった方が世の中面白いと思わない? だから好きなものは好きだし、アタシはアタシ。誰になんと思われようと、それを曲げる気はないのよ。
――ね、あなただって、きっとそうでしょう?
それはそうと……じゃじゃじゃーん!
アタシから落ち込んだ顔のあなたへ、花束のプレゼント!
お花はものを言わないけれど、だからこそ、あなたの心にそっと寄り添ってくれるはずだわ。
いつも頑張っていて、えらいわね。
アタシはあなたのことなんにも知らないから、こんなふうに励ますのはちょっとヘンかもしれないけど……たまにはこうやって、自分のこと褒めてあげるのよ。
ふふっ、やっと笑ってくれたわね。ちょっとは元気出たかしら?
……え、お代? それなら、その顔が見れただけでじゅうぶんよ。遠慮しないの!
さて、あなたの素敵な笑顔も見られたことだし、アタシはそろそろ戻るけど、暇だったらいつでもうちの店に寄るといいわ。見ず知らずの花屋だけれど、話を聞くことくらいはしてあげられる。
お花たちも、きっとあなたの心に、想いに、彩りを添えてくれるわ。
それじゃ、いつでも待ってるから! またね!
はじめまして! 旅のお方!
通りすがりですが、お会いできて嬉しいです!
本日はどのような旅をしておられるのですか?
……ふむふむ、なーるほど、『スマイル』……つまり、笑顔を探す旅に出ておられるのですね!
それって、とっても素敵です!
例えば落ち込んでいても、クスリと笑える出来事があったりなんかすると、暗い気持ちなどもいつの間にかどこかへ飛んでいってしまったりするものです。
誰かが笑顔になると、それを見た誰かも笑顔になる。その輪がみるみるうちに広がっていく……。ほら、想像してみると、とても――心がポカポカって、あたたかくなりますよね。
えへへ、そろそろお別れの時間ですから、名残惜しいですけど最後に、いつもあちこち旅して頑張っているあなたを、ぎゅーって抱きしめさせてくださいね。
まだまだ旅を続けられるのでしょう?
きっとこれから、私以外にも様々な方とお会いするのでしょうね。
今日のあなたが笑顔になれるような、よき出逢いがありますように!
それではまたいつか、どこかの片隅でお会いいたしましょう。
行ってらっしゃい!