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3/31/2026, 11:29:19 PM

今日のお題「幸せに」
 
 例えば、年賀状の文面で。
 例えば、教師が教え子に。
 例えば、両親が結婚する子どもへ。
 重さは違えど、他者の幸福を祈る言葉には、決別が込められているように思う。

「君を幸せにするから」とあなたは言った。でも、行動は何一つなかった。きっと、考えてもいなかった。
 最初から、別れは潜んでいたのかもしれないな、と彼の言葉を思い出す。


 

3/30/2026, 11:32:02 PM

今日のお題「何気ないふり」

 朝起きて、顔を洗ってコーヒーを入れる。食パンをトースターにセットする。
 これまで続いてきた日常が、今日も続いているかのように。
「おはよう」
 答える声がない。こみ上げる悲しさを、意識して頭から追い払う。
 平気な振りをして、ぎこちない朝が過ぎてゆく。
 今は振りしかできないけれど、いつかこれが日常になる。
 それはとても寂しいこと。耐えるしかないこと。
 目にたまる水分がこぼれ落ちないように、まぶたをぎゅっと閉じる。
 ……耐えられるかわからないこと。
 

3/29/2026, 11:09:43 PM

今日のお題「ハッピーエンド」

 いつの間にか、図書館の窓から差し込む日差しは傾き、赤みを帯びていた。
 年季の入った木製のテーブルに読み終わった本を置き、私はふぅ、と小さく息を吐いた。
 他愛ない恋愛小説。物語の中で、ヒロインは素敵なヒーローに出会い、ライバルの女の子の妨害にも屈せず、愛を育み、ハッピーエンドに至る。王道の、ごくありふれた物語だった。
 でも、物語の中でさえ、ヒロインとヒーローのハッピーエンドの周りには、たくさんのアンハッピーエンドが散りばめられている。
 私は、ヒロインにはなり得ない。平凡で、臆病な一般人だ。ライバルの女の子にすらなれないだろう。ヒーローに憧れて、何をするでもなく勝手に失恋するモブ。
 窓の外を眺めると、ちょうど校門を出る彼の姿が見えた。豆粒ほどの姿なのに、彼だとわかってしまう自分に苦笑が漏れた。肩のふれあう距離に女の子の姿。
「ハッピーエンド」
 つぶやいて、彼らにはエンドではないのだと思う。物語と違って、関係が切れるまで彼らにエンドは訪れない。別れるまでエンドがないならば、ハッピーエンドとは現実にはなんて難しいんだろう。
 でも、アンハッピーエンドで終わることはできる。この恋心を小さくまとめて、粉々に砕いてしまえばいい。いつか風にさらわれて、なくなってしまうだろう。
 未練がましく彼の姿を見送って、本を返しに席を立つ。
 ハッピーにしろ、アンハッピーにしろ、気持ちにエンドマークをつけるのは難しそうだ。

3/28/2026, 12:54:32 AM

「浮気なんてしてないわ」
 最近、ウキウキとおしゃれをして出かけるようになった妻が言う。
「高校時代の友人に再会して、出かけてるのよ。ただの友達。あなたにも紹介したでしょう?」
 あの、ナルシストイケメンくんか。確かに顔はいいのかもしれないが、こちらを見下す傲慢さが顔にも態度にも表れていて、好きになれなかった。あなたは気づいていないけれど奥さん奪ってやったぞ、間抜けめ。と男の目が言っていた。
「信じてないのね。私の心の中を全部、あなたに見せることができたら、浮気なんてしていないってわかってもらえるのに」
 出来ないから言ってるんだろ。心の中なんて、見れるようになったら困る。俺の心も見られるってことだ。
 浮気が事実でも、まったく傷ついていない。妻のことなんて、目の前にいない限り、頭の中から消えている。惰性で結婚生活を続けているだけだ。多分、妻よりも、俺の方が愛していない。妻は、浮気を否定するくらいには俺をキープしておきたいと考えているようだし。
「わかったよ。信じる。メシにしよう」
 信じていないけど。どうでもいいことだ。ああ、俺も誰がときめく人を探そうかな。