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今日のお題「ハッピーエンド」

 いつの間にか、図書館の窓から差し込む日差しは傾き、赤みを帯びていた。
 年季の入った木製のテーブルに読み終わった本を置き、私はふぅ、と小さく息を吐いた。
 他愛ない恋愛小説。物語の中で、ヒロインは素敵なヒーローに出会い、ライバルの女の子の妨害にも屈せず、愛を育み、ハッピーエンドに至る。王道の、ごくありふれた物語だった。
 でも、物語の中でさえ、ヒロインとヒーローのハッピーエンドの周りには、たくさんのアンハッピーエンドが散りばめられている。
 私は、ヒロインにはなり得ない。平凡で、臆病な一般人だ。ライバルの女の子にすらなれないだろう。ヒーローに憧れて、何をするでもなく勝手に失恋するモブ。
 窓の外を眺めると、ちょうど校門を出る彼の姿が見えた。豆粒ほどの姿なのに、彼だとわかってしまう自分に苦笑が漏れた。肩のふれあう距離に女の子の姿。
「ハッピーエンド」
 つぶやいて、彼らにはエンドではないのだと思う。物語と違って、関係が切れるまで彼らにエンドは訪れない。別れるまでエンドがないならば、ハッピーエンドとは現実にはなんて難しいんだろう。
 でも、アンハッピーエンドで終わることはできる。この恋心を小さくまとめて、粉々に砕いてしまえばいい。いつか風にさらわれて、なくなってしまうだろう。
 未練がましく彼の姿を見送って、本を返しに席を立つ。
 ハッピーにしろ、アンハッピーにしろ、気持ちにエンドマークをつけるのは難しそうだ。

3/29/2026, 11:09:43 PM