香水
あの子が通った。
香水なんてつけていないけれど
あの子はあの子の香りがする。
とても良い香りで
貸したワイシャツがあの子に染まって帰ってきた時
しばらくこそばゆい気持ちになりながら
それを着ていた思い出
言葉はいらない、ただ…
何かを言って欲しかったんじゃない
ただそばにいられたことが
幸せでした
突然の君の訪問
たまにはラブロマンスがいいな。
対立するんじゃなくてさ。
そう思っていた矢先だった。
買い物途中、ふと見知った背中が見えたんだ。
ずっと会いたくてたまらなかった君だった。
2度と会うものかと思った君だった。
きっと僕から話しかけたんだね。
少し気まずい空気の中
雨に打たれながら一緒に帰る事になったみたい
これがラブロマンスかと言われたら少し違うだろう
でも僕はここ止まり。それ以上はいけない。
そしてこのささやかな日常さえすり抜けていく
だってこれは夢だもの
夢から覚めて仕舞えば霧がかかってしまう
もう細かいところは思い出せない
どこかに記しておかなければ消えてしまう。
雨に佇む
昼間であるのに教室の電気が異様に明るく見える
そんな日が幼稚園の頃から好きでした。
歳を重ねても雨が降るとワクワクします。
しかし近年では大雨が増えてきて
あまりこのようなことは大きな声で言えません。
そして気づいたのは
このワクワクは自分がいる建物に
かなりの信頼を寄せていないと湧かない事
1人の生活が始まり嵐が来ると
ドキドキの意味合いは変わり
建物が壊れないか心配になってくる。
大きな雨粒が屋根に当たる音が
隙間の空いている玄関のドア
崩れてこないかしら
いつかまた仄暗い外を見ながらワクワクしたいなぁ
私の日記帳
朝 食べたもの 天気 着た服
授業 前の席のあの子 今日も可愛い
あっ 寝てる など
いつか日記を見た時に
この1日を思い出せるように
なるべく細かく記した
絶対見られたらダメ!
あんなに好きなのに
過ぎ去ったあの日々を思い出すには辛すぎて
上べだけで語るには容易いが
写真や日記 情景を思い出すと 胸が苦しい
後輩となった親戚の演奏が
あの日々を想起させる
ズンと重くなる腹の底
きっとまだ君達はあの青の中でもがいているのね
あの人にあいたくなるけれど
もう会わないと決めたのだから
あの青くて苦くて渦巻いた
あの思い出を今更汚したくないの