テーマ 突然の別れ
出会いがあれば別れもありますよね。
別れるために出会う…終わりの始まり
って言葉、よく聞きます。
小説でもよく使われてるし
私も「別れるための出会い」ってあると思ってます。
でもこの言い回しはちょっと悲しいので、自分が使うことはあまりないんですけど
「出会うために別れる」っていう…恋人とか転職とか、次のためにっていう。
こっちは前向きな感じがするので、個人的には好みです。
突然の別れ、で私が思い付くのは「野良猫」。
最近、庭で野良猫がよく寛いでるのを見かけるんです。
3月はふてにゃんみたいな子で。
すごく人懐っこくて、目の前でゴロゴロしたりにゃーにゃー鳴いて可愛かった。
先月は全身焦げ茶色の野良猫。
今月入ってからは白地に黒の模様の野良猫が来てて
「こんにちはー」って話しかけたらピタッと止まって「お前誰」みたいな視線を送ってくるんです。
次の日は雨で、今日は来ないかなぁと思ってたらカーポートの下を平然と歩いてて。
「いらっしゃい。今日は雨だねー」って話しかけたら、ちらちら振り返りながらどこかに行ってしまいました。
3月のふてにゃん、元気してるかな。
可愛かったからちょっと残念なんです…
あの子にはもう一度会いたかったなぁ。
でも焦げ茶色くんが来てからは、なんとなくもう会えないのかなって思えて。
私が寝てる間とか、屋根の上に居てくれたりしないかな…
ちょこんと座って、虫や蛙の鳴き声をBGMにして夜空を眺めてたり。
突然の別れは悲しいけど
猫には猫の物語があるのだろう。
私が知らないだけで。
私の恋物語は「君の知らない物語」
愛読している小説の
たくさんある物語の1つに
憧れのシーンがあって。
「私があげられるのはこれくらいのもの。」
と、彼女が夏の大三角形を指差し
二人で星を眺める場面。
この小説を全く知らない
憧れのシーンも知らないはずの彼が
初めてのデートの帰り
星がよく見える場所に車を停めて
「俺があげられるのはこれくらい。」
と言った。
息を切らし走っていた。
後ろには、フードを深く被った男性が追いかけてきていて、薄く笑う口元だけが鮮明に見える。
追いかけられてるといっても恐怖はない。
どうして走ってるのかさっぱり分からない。
止まろうとしても止まらない。
走りながらそんなことを考えていると両足が急に重くなり、景色が途切れた。
夢だった。
スマホの電源を入れると6時。
「夢…。久しぶりにみたなぁ。」
大きく伸びをして、寝室を出る。
家事をしているうちに、だんだん夢の内容を忘れていった。
仕事を終えて帰宅。
今日は22時半から推しのラジオがある。
夕飯は軽めに済ませ、10分前にはチョコレートリキュールをカフェオレで割って待機。
あんまり甘いお酒は飲まないけど、推しの声を聞く時はコレが一番合う。
22時半。
「はい、みなさんこんばんはー。」と番組が始まり、心地いい柔らかな時間に包まれる。
1時間後にはいい具合に気分がほぐれ、ベッドに沈む。
「はぁ、今日もいい声でした。」
幸せな気持ちで目を閉じると、ふと夢の内容を思い出した。
あれは、推しのあの人だ。
顔も知らない。声しか聞いたことがない。だから口元しか見えなかったんだろう。その口元も、実物を見たことがないから想像でしかない。
なぜ走っていたのかも、多分、今日は番組があるから早く帰ろうって無意識に考えてたのかもしれない。
明日は用事が立て込んでちょっと忙しい。
今日は夢を見ずに朝までゆっくり眠りたい。
そう思って少しだけウィスキーをグラスに注ぐ。
もうすぐ日付が変わる。
窓を開けると満月が浮かんでいて、雨上がりの澄んだ風が髪を揺らす。
壁に背を預け、グラスを傾けると琥珀色の中に満月が映る。
昔、満月の夜に紅茶を淹れて、紅茶に満月を映すと精霊が現れ、願いを3つ叶えてくれるっていうおまじないがあった。
親の目を盗んでやってみようとしたけど、いつも睡魔に負けて気付けば朝だった。
思い出して苦笑する。
純粋で素直な心は、いつの間にかくすんでしまった。
ウィスキーに満月を映したら、ウィスキーの精霊がくるのだろうか…
お酒の精霊って、仙人とかおじいちゃんなイメージしか浮かばない。
それはそれで面白いかもしれないな。
そうして想像と共に夜は更けていく。
気付けば朝だった。