愛が返ってこなかった、たったそれだけ。
愛した分、それが返ってくるなんて、そんな稀なこと、私が体験出来るわけない、なんて。
この気持ち、どこに隠しておけばいいのかな?
知らず知らずに、涙が溢れた
「海行こうよ!」
たったその一言。私たちはすぐに用意して海に出かけた。波の音、冷たい水、キラキラと光を反射して光る水面。
「ほら!みずみずアタック!!」
「あ!ちょっと!」
笑い声が響く。遊んでいるうちに日は落ち、あたりは暗くなった。
「そろそろ帰ろっか。」
誰かが言う。頷く。
海へ、その笑い声は消えていった。
君の笑顔
君の声
君の行動一つ一つ
君の抜けてるとこ
君のめげないところ
君が置いた裏返しの服
君が投げた好き、の裏返しの言葉
全部愛しい
君の怯える声
君が見せたその表情
ゾクゾクする
君の行動は、全部、心の裏返しだよね?
知ってるよ、本命は僕だけだって。横にいる男はお飾りで、ただの従者でしかないこと。
知ってるよ、君は裏返しの行動でしか表せないこと
僕だけに見せるそのカオ。大好き
私、もうすぐ死ぬみたいです。病が早く進行してるだとかなんだとか。最初から助からない命だった。いつ尽きても、もう望みも何も無いからどうでもよかった。
病に侵されて、動けなくなって。自由は無くなった。いや、最初から自由など無かった。小さい頃、ここに売られて、病に侵されただけの人生だった。
「貴方には生きて欲しい。」
なんて言葉をくれた人も数え切れないほどいた。だけど、その言葉は私の心の穴を塞ぐことなど出来なかった。
「お沙耶さん。具合は?」
いつの間にか隣りに座る女が言う。なんとか首を小さく振った。そうすると、女は悲しい顔をした。
「ねぇ、もしも病が治ったら、なにをしたいですか?」
考えたことのなかったような問いだった。静かに目を閉じる。
空を飛びたい。ほら、あの鳥のように。
何度も繰り返していた言葉を思い出す。涙が一筋頬を伝う。
「自由、に、なりたい」
そう一言呟き、暗い意識の中に飛び込んだ。
「これで、お終いだね、私たち。」
「そうだな。今までありがとう」
さよなら、それは最上級の愛の言葉。そう信じてる。
「さよなら、する前にさ」
「うん」
「ここから、私を出してよ。」
「無理かも。じゃあね」
背を向けて歩き出した。なんの後悔もないさ、僕はただ愛していたんだから。