「俺じゃあ、だめか?」
どこからどう見てもイケメンの彼に上目遣いで見つめられる。少し潤んだ瞳、白い肌に反射する夕日。形のいい口を開き、最後のひと押しとばかりに話し始める。
「俺には、お前しかいない。お願いだ。」
「だから…っ」
「俺は、音楽はもうしない。だろう?俺は、それだけじゃ納得できない。音楽が嫌いになった?そうも言わないだろ、お前は。逃げるな。」
「うるっ、せぇよっ…お前には分からないだろ」
そこでやっと黙った。もう帰ろうと、カバンを持って立ち上がろうとしたときだった。
「分からないからっ、聞くんだよ!聞かなければなにも分からないっ!!そういうものだろっ!!!」
肩をすごい力で掴まれる。アイツの震える手が見えた。
「俺は、お前に憧れて歌を始めた。」
「それが、どうしたんだよ」
「だからっ、辞めないで欲しいっ…!!」
「うるせぇっ!知るかよっ!!どけ!」
「嫌だっ、お願いだ、俺と、歌ってくれ!!」
「だからっ…」
脳裏によぎる、かつての相棒の姿。隣で歌い、踊る度胸が高なった。常に笑顔で、前向きな奴だった。才能がどうとか言われてた時も、努力して諦めなかった。そんな奴だった。なのに、なのにあの日のイベントの帰り、事故死した。俺を庇って。痛いだろう、苦しいだろう。なのに、最後まで俺を心配して。最期には、歌を続けてって。思い出し涙が零れる。
「お前は、あいつみたいに歌えるのか?」
「…!!分からないけどっ!歌えるようになってみせる!」
「いいよ、お前と組む。」
「ほ、本当か?信じるぞ?」
キラキラした瞳で俺を見つめる。あまりの綺麗さにうっとなる。
「お前、見つめるの禁止!!」
「な、なんでっ」
「そんなに見つめられると、おかしくなるんだわ」
えーっと不満を言うような表情を浮かべシュンとしたのを見て、かつて相棒を思い出す癖を辞めるために、思い出に蓋をした。
『どーも!LOOKeyです!よろしく!』
I don't understand people's feelings.
Everyone is like that. I feel like I know.
"It's okay, I understand."
Even if I say that, no one will know what's in my heart, and I won't tell them.
I was alone and cried.
(訳) 人の気持ちなんて分からない。誰もみんなそう。
分かってる風。
「大丈夫だよ、分かってるから」
そんなことを言っても、私の心の内は誰にも分か
らない、教えない。
1人で塞いで、私は泣いた。
「ないものねだりはやめましょう。僕らは、このまま、受け入れるしかないんだ。」
「でも…」
「大丈夫。僕が君を護る。」
だから。
その先を、私は聞くことは無かった。彼の背を見ているしか無かった。
「叶わないって、分かってるよ…」
でも、願わせてよ。平和も、なにも。ねぇ。
「ないものねだりって、分かってるから…」
「影乃くん、アタシ、君が好きなの。」
あーあ言っちゃった。ほんとは罰ゲームなんだから、さっさと断ってほしいなぁ。
「ぼ、っ僕も、好きですっ!!」
後ろからニヤつく友人が見える。彼を巻き込みたくないのに。こういう面倒事に。どうして。
「あの、付き合い、ますか?」
あーもう。めんどくさい!!
「これ、罰ゲームだから。」
そう言って踵を返そうとした時だった。
「あ、あの、顔、赤いですけど大丈夫ですか?」
「なっ…!!」
そんなわけ、そう続けようとしても上手く言えない。
ほ、ほんとにほんとは…!!
「影乃なんて好きじゃ無いんだからあぁぁぁあ!!」
君の後ろ姿を見送る僕の心は、晴れ、ところにより雨。
あーあ。めんどくさいなぁ…さよなら