路地

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2/20/2023, 1:59:34 PM

同情して、優越感を感じていたんだろう
ひとの不幸を蜜のように啜った
そんな汚い自分に気づいてしまった
誰も、俺より酷いやつなんかいないよな

なあ、おまえ、同情してくれないか。

2023/2/20『同情』

2/5/2023, 3:34:17 PM

くたびれた夜。
スーツとかヒールとか、窮屈でしょうがない。
疲れには酒だよな、と冷蔵庫を開けたが、何もなかった。
舌打ちをしてサンダルを履く。

近くのコンビニでビールとタバコを買った。
部屋じゃ吸えないから、ちょっと一服して帰ろう。
コンビニ外の喫煙所に行くと、ジャージにぼさぼさポニーテールの女性がいた。
ちょっと並ぶのには気が引けたが、まあ気にしないで吸おう。あっちもすぐいなくなるさ。そう思った

「おねえさん、つかれてんね」
不意に話しかけられ、びくっとしてしまう。
「はあ、まあ」
へへ、と笑って、タバコに火をつける。話しかけられるとは思わなかった。
「ねえ」
また話しかけられたので顔を上げると、ふうっと顔に煙を吐かれる。
目が痛い。
ちょっと顔をしかめると、にやっと笑った。
「おねえさん、このあと暇?」
だらしない格好の、しかも同性に、こんなに動悸したのは初めてだった。

2023/02/04『kiss』

2/3/2023, 3:31:07 PM

私の将来の夢は、化石になることです。
こんなことを書くと、びっくりする人も多いと思います。でも、化石になれたら素敵だなと思います。
今年はじめて、社会で歴史の授業がありました。
数千万年前の人の骨や生活のあとが残っているのは、すごいことだと思います。そうやって暮らしていた人たちのことを、現代の私たちが知れるというのも、やっぱりすごいと思います。
でも、骨も食べたものもきれいに処理される現代の暮らしを、未来の人が想像するというのは難しいんじゃないかと思いました。
そこで、私がひと肌脱いで、食べたものもわかるように、着ていた服もわかるように、きれいに化石になれば、きっと未来の人の研究も進むと思います。
病気とか、胃の中のものが見られるのは恥ずかしいけど、おもしろいような気がします。
もちろん、今すぐは死にません。
将来、時が来たら、きっときれいな化石になってみせます。

小学校卒業のときの文集を見直していたら、当時僕の好きだった子はそんなことを書いていた。
風の噂によると、彼女は今、地方の大学で地学を教えているらしい。
変わった子だったな。
きっと今も、瞳を輝かせて、自分の死に姿を夢見ているんだろうな。
そして1000年先も、その好奇心旺盛な魂を、彼女の体は待ち続けているんだろうな。

2021/02/03『1000年先も』

2/2/2023, 7:24:37 PM

わすれていいよ。
わすれられるものなら。

私は彼女に、最後の贈り物をする。
波に揉まれながら、彼女の好きな花を投げる。
息も絶え絶え、水の世界。
泣き叫ぶ彼女の顔。

きっとこれで彼女の心はずっと、私のもの。

2023/02/02『勿忘草』

2/2/2023, 7:12:16 PM

ゆれるブランコ
私は振り子
高さがだんだん落ちていく
心がだんだん凪いでいく

だけど誰かが私の背を押せば
また大きくゆれてしまう
いつこのブランコからおりられるだろう

2023/02/01『ブランコ』

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