#「ごめんね」
「ごめんってw」
そうへらりと笑って謝る所が、嫌いだった。
「もう…っ、ちゃんと謝ってよ、!」
「ごめんごめんw」
いくら言っても直らないその謝り方に、小さなため息が出る。それでも、好きだったから許せていた。
___
「ごめん」
笑いながら謝る姿が本当に嫌い。いつもとは違う笑いで謝る恋人に、怒りが募る。いつもなら許せていたものを、今だけはどうしても許せない。
恋人の遠くなっていく影を見送りながら、怒りで震える手を握りしめて手の平に爪を食い込ませる。それで、心の痛みを麻痺させるんだ。
#半袖
「あっつー」
パタパタと服で扇ぐいるま。
「なんでお前長袖来てんの?暑くね、?」
「ううん、暑くないよ」
「タオルいる?扇風機もあるよ」
小型の持ち運び出来る扇風機をいるまに見せると、いるまは俺を崇めるように扇風機を受け取る。
「まじ神、借りるわ」
「ん、」
早速扇風機の電源をつけて涼むいるま。髪が風の方向で少し靡く。ふと、いるまが何かに気付いた様に俺に向き直る。
「ちょっと腕貸して」
「え?なんで…」
ぐいっ
差し出すのをほんの少し渋っていると腕を引かれる。いるまが俺の服の裾を捲ろうとするのが分かった。
バチンッ
「っ…、あ、ごめ…」
思わずいるまの腕を払いのけてしまった。強くやりすぎたかもしれない。
「いや…、別にいいけど…」
少し驚いたよう。あぁ、どうしようどうしようと慌てるが、いるまは先程の事を気にしていないように俺の頭に手を置く。
「無理すんなよ」
「…、うん」ニコ
あぁ、切り傷とアザで塗れた赤と青紫の腕が憎くなる。
この腕がもっと綺麗だったら、いるまが愛してくれるのを素直に受け入れてたのかな
もっといるまを愛せてたかな
#天国と地獄
痛い
痛い痛い痛い痛い
苦しいよ、辛いよ
あぁ、いたい
お願い、許して。イタイのもう我慢できないの
お願い、許して。苦しいのもう身体中アザだらけで…
地獄みたい___。
「らん、大丈夫か?」
「ぁ、もう、終わったの…?」
「あぁ、もう今日は終わったよ」
「えへへ、いるまが良かったなら、良かった」ニコ
「あぁ、今日も可愛いな、らん」
そう言われるだけでいいの
このアザだらけで醜い身体をも愛してくれるなら
それだけでもう幸せなの
ね?そうでしょ?
#月に願いを
「おはよう、らん」
目を開くと、黄色い瞳が映る
ゆっくりと身体を起き上がらせる
そして、目の前にいる恋人が言った言葉をくすりと笑って訂正した
「…朝じゃないでしょ?笑」
「そうだけど、起きたらおはようだろ?」
そう言われて、考える
「そうかな…、いや、うん。そうか。そうだね」
「おはよ」
にこりと表情を緩めると、頭を撫でてくれる
「今日ね、怖いの見たんだ」
撫でてくれていた手が離れた
「夢?」
「あのね、いるまが死んじゃったの」
「そっか、でも大丈夫。死んでないから安心しな」
頭から離した手をまた頭の上にのせる
「…嘘つき」
「…でも、ごめんね。そうだよね、俺のせいだもんね」
「ごめん、もうおはようって、しないと」
「おやすみなさい」
___
眩しい
「ん…」
「ぉ、はよ」
月明かりが眩しい
また、夢から覚めた
空に浮かぶ月はいるまと同じ黄色
もう、いるまに会えないのかなと思うと、いつもと同じ様に月を眺めて考えてしまう
また、いるまと逢えますように___。