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5/27/2025, 9:36:39 AM

名前が無いの、とその人は言う
きっと忘れられてしまったのと
名前を付けて、とその人は言う
この世で一等素敵な名を、と
だから一つの名で呼んだ
その人は嬉しそうに頷いた
随分前にその人が捨てた
一等素敵だった人の名を

‹君の名前を呼んだ日›

5/27/2025, 9:33:08 AM

あのこはどこか雨に似ていた
重たく暗い色の髪とか 真っ白白な顔とか
しとり吸い付く手とか ささめく様な声が
雨に似ていた 窓の外に降りしきる
向こうの公園で遊ぶことは もう二度と無いけれど
雨に似ていた 笑顔が日のようだった
光が似合っていた 太陽のあった頃は

‹やさしい雨音›


「『うた』って字って色々あるけど何が違うの?」
「ぐぐれー」
「今はAIに聞けらしいよ」
「これが……ジェネギャ……」
「コントはもういいから」
「えっと…『歌』がメロディとリズム有りで『唄』が歌と同じだけど伝統寄り、『謡』が楽器なしの『詩』が言葉のみ、だって。Gなんとか曰く」
「早速使いこなしてやがる」
「いや英文字3つを覚えてない時点でどうかと」
「ふーん、じゃあ今のコレってまだ詩な訳だね」
「おーよ、歌にしてやるからはよ寄越せ」

‹歌›

5/24/2025, 10:04:22 AM

適度に硬いクッションに
さらさらなシーツ皺寄せて
心地よく流れる上掛けと
少し寒いから薄い毛布
くらくら真っ暗夜の中
ちよちよ眩しい朝日まで
何かも何かも投げ出して
夢にとっぷり眠りにどっぷり
たいそうたいそう幸せなこと
たいそうたいそう平和のこと

‹そっと包み込んで›

5/22/2025, 12:20:53 PM

白い衣に包まれて
私は両の目を閉じていた
昨日と違う場所へ行き
今日から違う名前で呼ばれ
明日の新しい道が拓く
白い衣に包まれて
私は両の目を閉じていた
見開き一番に見る光景を
想って目を閉じていた

‹昨日と違う私›

5/22/2025, 3:48:37 AM

何処かの国で日が昇る時
僕らの空には月がかかる
何処かの国で雪が降る時
僕らの地から水が消える
何処かの国で王が立つ時
僕らの街から葬列が発つ

‹Sunrise›


吐いた息が白く染まる
ふわり空へ解けていく
吐いた息が泡を形どる
こぽり空へ昇っていく
吐いた息が灯を揺らす
ふつり光が消え落ちる

‹空に溶ける›


丁寧に繕って丁寧に手直しして
あの人に貰った贈り物
丁寧に扱って丁寧に飾り直して
あの人が最後にくれたもの
何年経っても手放せない
手放す気はさらさら無い
きっと墓場まで持って行く
あの人と隠した秘密のこと

‹どうしても…›

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