始めましてじゃなかった
多分、きっと
差し出された左手は自信無く揺れて
知っていた、淋しいくらい
涙が溢れた
唇が動いた
それでも、誰か分からなかった
安心したみたいに笑っていた、
君の名前を呼べなかった
伝えたいことが
あった、
はず、
で、
‹終わり、また初まる、›
石屑と氷粒を辿って行こう
鋼片と記録を辿って行こう
重たい力を引き千切って
君の生きた大地まで
冷え固まった痛みを
オウトツの不安定を
辿って行こう
君の帰る街まで
圧縮の誘惑に乗らぬように
煙るガスに惑わぬように
辿って行こう
君のいた場所まで
熱く燃える星を
水満ちる星を
辿って行こう
君の旅路を
‹星›
「でもどうせ、『願い事を増やしたい』とか、
『時間を巻き戻したい』とか、
『生き返らせて』とかは駄目なんでしょう?」
「だからね。私、意地悪を言うわ」
「『もう二度と、誰の願い事も叶えないで』」
‹願いが1つ叶うならば›
君よ死んでくれるなと
哀しく切実な祈りの声
待つ者も未来もその手に在りて
尚無為に捨てねばならぬ命
一等好きなうただった
一等好きなうただけど
身に迫る感情にならぬことを
実の経験とならぬことを
不定の先を臨みて望む
‹嗚呼›
お決まりノックはリズミカル
何処でも良いから扉を開け
大人には内緒の秘密基地
子供達だけの魔法の公園
声も性別も肌の色も
耳の形も手の数も
生まれた世界も違うけど
魔法の公園ルールは一つ
破っちゃったら永遠に
‹秘密の場所›
「お前その歌好きね」
「君にも歌ってあげようか?」
「冗談。倒せたら聞いてやるよ」
「もう。直ぐに聞かせてあげるからね」
‹ラララ›
風が運ぶ
命を運ぶ
種を運ぶ
蝶を運ぶ
香を運ぶ
雲を運ぶ
煙を運ぶ
蝗を運ぶ
毒を運ぶ
病を運ぶ
魂を運ぶ
風が運ぶ
風が運ぶ
風が運ぶ
‹風が運ぶもの›
「『1+1=2』って当たり前じゃない?
でも、これが確かにそうだって証明するのは、
すっごく大変なんだって」
「『1』が『何』で、『2』が『何』で、
『=』はまだしも『+』って『何』って、
そういうことを証明しないといけないんだって」
「水と氷の関係とか、ガラスの正体だってそう。
当たり前な事ほど実際は難しかったり、
実は異常なことだったりするんだって」
「だからこれは冗談だけど、」
「『君』って一体『誰』で『何』なんだろうね?」
‹question›
忘れないでね、待っているから
忘れていいよ、沈み切るよりも
誰もに伝えて、二度と無いように
誰にも言わないで、笑顔のままに
孤独じゃないよ、大事だったんだ
一人になって、どうか傷付かないで
立ち上がらないで、沢山泣いて良いの
立って歩いて、まだ時間は続いてる
幸せになって、せめて僕達の分
不幸にならないで、それは私達の分
生きて、生きて、最期まで生き抜いて
せめて君だけは
どうか君だけは
‹約束›
白いスカートが翻る
まだまだ冷たい水面の上
白い脚がリズムに跳ねる
砂浜消える足跡残し
夏の似合う白いワンピース
冬の海に凍えもせず
一人楽しげに踊っている
一人だけで踊っている
‹ひらり›