「『1+1=2』って当たり前じゃない?
でも、これが確かにそうだって証明するのは、
すっごく大変なんだって」
「『1』が『何』で、『2』が『何』で、
『=』はまだしも『+』って『何』って、
そういうことを証明しないといけないんだって」
「水と氷の関係とか、ガラスの正体だってそう。
当たり前な事ほど実際は難しかったり、
実は異常なことだったりするんだって」
「だからこれは冗談だけど、」
「『君』って一体『誰』で『何』なんだろうね?」
‹question›
忘れないでね、待っているから
忘れていいよ、沈み切るよりも
誰もに伝えて、二度と無いように
誰にも言わないで、笑顔のままに
孤独じゃないよ、大事だったんだ
一人になって、どうか傷付かないで
立ち上がらないで、沢山泣いて良いの
立って歩いて、まだ時間は続いてる
幸せになって、せめて僕達の分
不幸にならないで、それは私達の分
生きて、生きて、最期まで生き抜いて
せめて君だけは
どうか君だけは
‹約束›
白いスカートが翻る
まだまだ冷たい水面の上
白い脚がリズムに跳ねる
砂浜消える足跡残し
夏の似合う白いワンピース
冬の海に凍えもせず
一人楽しげに踊っている
一人だけで踊っている
‹ひらり›
乱暴に床踏み歩く音
君は静かに首を振る
片端から物壊す音
君は静かに首を振る
脅かすように言い連ねる音
君は静かに首を振る
閉ざした扉蹴りつける音
君は静かに首を振る
ブレーキサイレン物々しい気配
君は静かに首を振る
暴れ落ち高く金属音
君は静かに首を振る
喚く音が遠ざかり無事を尋ねて歩く音
君は静かに背中を押す
開いた扉の隙間に光
君は静かに背中を押す
慌ただしくも安堵の音
君は静かに背中を押す
振り返って手を伸ばす
君は静かに首を振る
一緒に出ようと訴える
君は静かに首を振る
おいきなさいと背中を押し
君は静かに手を振った
‹誰かしら?›
そこにいくの、 と声がする
始めようか、 と声がする
もう少し頑張ろ、と声がする
休みも大事、 と声がする
あと少しだよ、 と声がする
油断禁物、 と声がする
後悔はない、 と声がする
さあ行こうか、 と声がする
ここにいるよ、 と声がする
未来の私が手招いて
此処までおいで、と声がする
‹芽吹きのとき›
腕の中が赤く熱い液に浸り
酷く熱く荒く呼吸が上がる
あの日みたいと取り憑かれたように
あの日みたいと心が冷えて
ごぼり、と
目が開いている
そうだ違う、あの日じゃない
腕に収まらない大きな体躯も
床を擦らない短い髪も
あの日の君じゃない
あの日亡くした君じゃない!
震わせない手が鞄を漁る
今の君はまだ生きている!
あの日救えなかった私でも
きっと今なら、きっと今日なら、
君を救う、絶対に!
‹あの日の温もり›
淡色ドレスシャツふわふわスカート
長い髪にリボンとレース
色白お肌に適度な血色
きれいな瞳と細い指
うさみみ肉球素直な尻尾?
君の好きなの全部継いで
継いで継いで継いだのに
君はまだこっちを見ない
……今度は何に見惚れてるの?
‹cute!›
僕にできるのは記録であり、
記憶には遠く及ばないのだと、
君は胸を張っていた。
濃淡も明暗もまちまちに消えやすく、
歪曲とフィルターで不確定になる、
印象だけ残された架空のビデオが、
それほどまでに素晴らしいのか、
分からないのは僕に感情が無いせいか
‹記録›
帰るまでが遠足で
終わりよければ全てよし
だけど
どうしようもないエンディングでも
希望も救いもない最後でも
きっと君の心の中
膿腐る傷の一つにでもなれたなら
‹さぁ冒険だ›
君の為に花を一つ
例えば君の歩く安全な街並み
例えば君の笑う無限の感性
例えば君の登る夢のステージ
例えば君の学ぶ多彩な国々
例えば君の繋ぐ愛情のカタチ
君のゆく未来に一つの花を
私が贈る一つの花を
皆で合わせて君達に贈る
精一杯の花束を
‹一輪の花›
「『十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない』とは言うけどさ、そうしたらこのオカルティックファンタジーとかも、未来にはただの事実事象になっていたりするのかね」
「まあテレビ通話に映写機合わせたら、ほぼこの通信魔法とおんなじ見た目になるよね」
「帰宅した時には洗濯も掃除も終わって冷暖房ついてます、とかドワーフか妖精の扱いになってそう」
「空も水上も宇宙も深海も行けます、カッコ尚って奴だけどまぁコレ正気の疑いから入るかね」
「それまず地上空中の移動速度ぶん投げた方がひっくり返るやーつ」
「雨乞い諸々系は魔法より神様になりそうか」
「秒で育って実るとかもマジね」
「身体生やせるはアクションファンタジーだと想います!」
「バベル塔無くても言葉通じるしなぁ」
「後は何が科学技術に落とされるかな」
‹魔法›