木星はガスで出来ているらしいと
君は白い息を吐く
天王星は氷で出来ているらしいと
君はアイスに齧り付く
水星は岩石で出来ているらしいと
君は河原で積み遊ぶ
そして僕らもこの星の一部と
君は命の輝きを
‹星のかけら›
ぱちり目を覚ます知らない音
何処か楽しげに弾む曲
擦過の音はサッカーの様に
床を滑る割れた画面
知らない音が鳴っている
知っている筈の携帯から
過保護の過ぎる人達は
今度は何を仕込んだやら
誘拐犯の安否もそぞろに
静か静かに眠るふり
助けが届くその時まで
何も何も知らないふり
‹Ring Ring…›
行くのかいと問えば君は黙って頷いた。
止められないことなど分かっていた、
その優しさなら尚更に。
だからせめて君の背に、
空を逝く不帰の背中に、
誰よりも強い風を、
最期まで翔け抜ける為の
強い、強い風を贈る。
一度切りの祈りに代えて、
平穏を望んだ祈りに代えて。
‹追い風›
二人手を繋いで
買い物をしたりとか
二人机に向かって
お菓子を摘むとか
二人頭を突き合わせて
とりとめなく将来を笑うとか
そのくらいでいいから
そのくらいでいいから
せめて物語の中だけでも
ハッピーエンドにしてくれないの
‹君と一緒に›
やわらかな日差しに息を吐く
体感僅かな温もりは、正しく白い霧を作った
「やれ、冬日和って奴かねぇ」
隣で燻る白い煙は、熱と毒を孕んでいた
「小春日和じゃなくって?」
諳んじた書を褒めるように、温かな手が頭に掛かる
「それは秋の話だねぇ。真冬は名前が変わるのさぁ」
薄く湿った髪は冷たく、赤い指を凍らすようで
「変なの」
積もった白を払うように逃げれば、笑い声が落ちた
「明日にゃまた大嵐だ、早うお帰り」
‹冬晴れ›
「恋人といるのが幸せな人」
「友達といるのが幸せな人」
「家族といるのが幸せな人」
「一人でいるのが幸せな人」
「そう、誰と居るかすら幸福は異なる」
「他も合わせれば更に千差万別」
「故に『万人にとっての幸福』とは」
「『不平等な不幸の積み重ね』と成り得る」
「それすら平等に均すのならば」
「其処は既に幸不幸も無い、徒の虚無に他ならない」
‹幸せとは›
「どうしたの、寝起きのまんまじゃない」
「今日は良いの、時間通りの方が大事」
「それでもちょっと整えたら?」
「良いの良いの、着飾ってもぼろぼろでも
どうせ言われる言葉は同じなんだし」
‹日の出›
「今年はね」
「今年こそは」
「今度こそ『いいひと』に」
「誰にも恨まれない人に」
「誰にも嫌われない人に」
「誰にも認識されない人に!」
‹今年の抱負›
「『新しい年』は言うけれど、
『古い年』って言わないよね」
「それはそうでしょ、時間は過ぎ行くモノ
私達が置き去りにされているだけなんだから」
‹新年›
今年までの私に別れを告げて
昨日までの私を脱ぎ捨てて
一秒前に吸い込んだ
空気と言葉でさよならしよう
‹良いお年を›