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12/2/2024, 12:58:07 PM

画面の向こうは触れられない
鏡の向こうは触れられない
物語の向こうへ触れられない
硝子の向こうへ触れられない
だから伸ばされた君の手も
当然のように空を切る

‹距離›


失くしたものは戻らないし
壊れたものは直らないし
死んだものは帰らないから
だからいい加減そろそろさ
ちょっとくらい忘れなよ
怒ったりしないからさ
……嘘だけど

‹泣かないで›

11/30/2024, 8:29:16 AM

近年とみに秋が短いと君が憂う
一月半程前まで半袖を出していた君
近年とみに夏が長いと君が憂う
一月半程前には羽織を出していた君
二人でもこもこ身を寄せ合うから
過ぎ去った季節の残滓に火を着けた

雪はまだ降らないようだ

‹冬のはじまり›


たまには甘えたくなる時があるし
きっちり叱られたい時もある
温もりが恋しい日も
帰れるからこその一人を楽しみたくなる日も
たくさん話したい夜も
ただそばにいて欲しい朝も
いろんないろんな日があるから
どうかまだ覚まさないで

‹終わらせないで›

11/27/2024, 1:33:39 PM

憎悪の裏返しで
復讐の切っ掛けで
暴力の同意語で
依存の理由で
影も形も証拠も無い
そんな都合良く曖昧なもの

‹愛情›

11/27/2024, 10:03:43 AM

僅かに怠いような
僅かに寒いような
僅かに眠いような
僅かに痛いような
僅かに淋しいような

   ような、

‹微熱›


暗闇に蹲る時はいつも
光の下へ手を引いてくれたから
光明に疲弊する時はいつも
影で休息を導いた

燦とした日差しのよく似合う子だった
静かな夜に似て落ち着くと甘え真似をして

今は似合わない素振りで似合わない場所にいるけれど
裏を安寧するあの子の代わりに
表の秩序を平定し続けるけれど

あの子と生きるこの世が少しでも平和なら
きっと何にも痛くなんてないから

‹太陽の下で›

11/25/2024, 9:17:54 AM

寒がりな友人がいた
いつも寒い寒いと言う割に
薄くて硬い生地を重ねるばかりだった

もっと暖かいの着ればと
ショーウインドウを指したが
友人は首を振った
編まれている系のがトラウマなのだと

さては手編み系プレゼントの
凄まじいブッキングでもしたかと
からかい混じりに言えば
前半だけは正解と白い溜息

自然にしかし突然冷たい指先が
久し振りに寒風に晒した首を掴んだ
「所で随分ばっさり切ったようだけど」
「何かあった、イメチェンかい?」

‹セーター›


「今更星を落とした所で
 既に立った舟の行く先は
 とっくに変わりはせんよ」
「喜べよ馬鹿共たった今
 お前等は全ての人々の勇敢を
 無意味な不帰還の旅にしたのさ」

‹落ちていく›

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