好きなんて愛してるなんて
そんな感情だけじゃどうしようもないよ
本当なんて真実だなんて
そんな言葉だけじゃどうにもならないよ
開けたいならきちんと言って
あの日確かに決めた一言を
君が確かに本物だと証明したいなら
‹愛言葉›
初めての握手は熱くって
びっくりしたのを覚えている
寒い日の握手は冷たくて
びっくりしたのを覚えている
暑い日の握手は乾いてて
びっくりしたのを覚えている
別れの握手は凄く強くて
びっくりしたのを覚えている
再会の握手は酷く繊細で
びっくりしたら君が笑った
‹友達›
最初から素直になれていたならば
一緒に逃げてくれたかな
‹行かないで›
生まれ落ちた日に温もりを
成長と痛みの夜に希望を
冒険へ踏み出す昼に輝きを
夢現に揺れる夕暮へ変化を
やがて遠く旅立つ光へ自由を
駆けて翔けて全うするその生へ
遥かな蒼より祝福を
‹どこまでも続く青い空›
「祠壊したの?」
「掛布替えよとしたのに引っ掛かって壊れた」
「あらら、ばちぼこ怒ってない?」
「ばちぼこ怒られた。でも直したら良いって」
「……ちなみに今なんの作業中?」
「ロウソク。どうせならかっこいいドラゴンで
飾る夢を叶えたいんだって」
「……純和に?」
「純和に。」
「あと御神体はリボンでドレスにしたいって」
「純和に」
「純和に。」
‹衣替え›
泣き喚いて
喉裂いて
有らん限りの声で
枯れ崩れる程に
叫んだ所で
前を向いた君には
どうせ届きやしないのだ
‹声が枯れるまで›
「私、君の事がね、」
一つ頷くと、残念そうに首を傾げる
「もしかして、毎回言ってるかしら」
一つ頷くと、不満気に首をひねる
「待ってて、たまには違う事言ってみせるから」
一つ頷く、散々に彷徨く視点と小さく開く唇
「そうだ、これならきっと初めてでしょ」
「絶対墓まで持っていく話だもん」
一つ頷く、やっと安堵したように笑う
囁く言葉は寸分違わず
365回目の今日も、同じ会話から始まった
‹始まりはいつも›
駅に着いたと言ったのに反対口に出た
家にいるって言ったのに不在だった
目の前に居るって言ったのに誰もいなかった
わたしメリーさん
もう諦めていいかしら?
多分違う電話に掛けちゃったの
‹すれ違い›
「天高く馬肥ゆる秋と言いますが」
「はい」
「はいじゃねーんだわ何で痩せてんだよ」
「秋味ってあんまり新鮮味無くて……」
「果物にしろ魚にしろ色々あるだろ?」
「全部去年までに食べてるよ……」
「新品種とか新商品とか」
「どんだけ改良されたって、葡萄は葡萄の味しか
しないよ。他もね」
「……じゃあ普通の飯は」
「それこそ生まれてからずっと食べてる訳で」
「……おーけー食事強化プログラム入りまーす」
「やだーー!」
‹秋晴れ›