君と再び出会えた事
君と今度こそ手を取り合えた事
穏やかで平凡な日々の中
他愛無いことで笑い合えた事
長い生を最期まで隣に居れた事
僕がずっと願っていた事で
奇跡的な今生だと思ってた事
君がずっと叶えたかった事で
その為に何でも出来てしまった事
不意に現れたその異形が
代償だと嘲笑うまで
その全てを知らなかった事
‹奇跡をもう一度›
黄昏は誰彼、
かわたれは彼誰、
その何方もが薄暗く、
出逢うヒトが誰であるか
確信できない明るさの時間。
だからきちんと誰が分かるまで、
見えた素振りをしてはいけないよ。
と、隣で手を繋ぐ君が言う。
全く見知らぬ君が言う。
酷く熱い掌が
大丈夫だと震えている。
‹たそがれ›
「花が咲くのは?」
「あと1年」
「旅行に行くのは?」
「あと1月」
「空が晴れるのは?」
「あと1週間」
「おやつのケーキは?」
「あと3日」
「幸せなのは?」
「これまでずっと」
‹きっと明日も›
画面がうるさく瞬いている
此方を見てよと瞬いている
換気扇が回っている
気付いて頂戴と回っている
目覚まし時計がないている
早く起きてとないている
白い腕は伸ばされて
そのまま冷たく冷えてかたまり
一つ一つ全部静かにできるまで
綺麗でいてねと嘯いた
‹静寂に包まれた部屋›
「ねえ君、私の君。一つ頼まれてはくれないか」
「なんだい君、私の君。珍しいじゃないか」
「また明日、と。言ってはくれないか」
「君、」
「後生だ、この一度っ切でいい」
「……私は、嘘が言えないよ。知っているだろう」
‹別れ際に›
ぽたぽたと黒雲が涙を零していた
どうしたのと問えば逸れたのと言う
数時間前の豪雨を齎した雲は
とうに風で流されており
一応と方向だけ指し示せば
ありがとうの言葉を置いて
青空を遅々と流れていく
果たして追い付けるだろうか
水溜りを狭く叩く大粒は
もって二時間だろうけど
‹通り雨›
「絵文字って何なん、スタンプで良くね?」
「それな。読み文字は単色で良いんだわ」
「まじほんと……ねえまじで出てこないんだけど
これ何で変換するの」
「何?……『こうよう』とか『もみじ』とか?」
「どっちも駄目だったんだわ既に」
「えええ、あと何あるの難易度鬼じゃん」
「まじ無理」
‹秋🍁›