コスモスの花を贈った
可愛らしい花言葉を
君が存外気に入ったから
秋になり花弁が開く度
一輪添えて招待した
桃に白に赤に触れ
君は何度も微笑んだ
秋になる度思い出す
花弁開く度思い出す
茶色の花を一輪摘んで
星の輝く空を見る
‹秋恋›
幸せなのが好きでした
大切な人が幸せなのが好きでした
親が兄弟がお世話になった親族が
最期まで幸せであれば良いと思い
出来ればそれを看取らずに
誰一人も見送らずに
私が一番に消えたなら
多分それ以上は無いのだと
‹大事にしたい›
生まれて
大きくなって
成長して
大人になって
枯れ老いて
眠りにつく
有限たる生命、その全てが美しく
その全てが素晴らしかったから
全部が永遠であれば良かったのに、と
花を一つ、君に手向けて
‹時間よ止まれ›
地上の灯火は人々の一生で
夜空の燈火が星々の一生なら
星となった君は
次は何処で光を点すのだろう
‹夜景›
例えばこんな景色の下で
他でもない君と共に
心弾ませて歩くことが出来たなら!
‹花畑›
「泣いているよ」
「引っかき傷が傷んだんでしょ」
「泣いているよ」
「炙られて熱かったんでしょ」
「泣いているよ」
「煙がしみたんでしょ」
「泣いているよ」
「呆れて諦めちゃったんでしょ」
「絶滅と崩壊に?」
「変わり映えしない愚かさに」
‹空が泣く›
日に三度
時々もっと
光る画面
未読でごめんね
透ける指先
‹君からのLINE›
神を見た
捧げられた宝玉に触れ
満足に微笑む神を見た
誰もが心奪われ
誰もが魂囚われる
愛しく慈しむ眼差しに
ある人は木を掘った
ある人は機を織った
ある人は弦を鳴らし
ある人は字を連ねた
皆神に焦がれた
あの眼差しを受けるに足る作品を
あの微笑みを間近に受ける僥倖を
心を込めて
魂を削って
命を燃やして
精根尽き果てて尚
神に焦がれた
慈愛に焦がれた
そしてそしてそのくには
神が微笑み歩く宝物庫は
作品以外は何もかも
誰もかも残ってはいない
‹命が燃え尽きるまで›