5年前の私は楽しんでいた
4年前の私は怒っていた
3年前の私はモヤついていた
2年前の私は頑張っていた
1年前の私は幸せだった
今年の私は
今日の、私は
‹私の日記帳›
君が手を挙げると、私も手を挙げる
君が隣を見ると、私も隣を見る
君が笑顔になると、私も笑顔になる
君の視界から外れると、
君が視界から外れたら、私は一旦消える
次に映る人を見定めて、私は形を変える
‹向かい合わせ›
伸ばした指が優しく取られて
良かったと思う気持ちは嘘でなく
手の先が自分だけだったらと思う気持ちもまた
決して嘘ではなかった
笑顔で振られた手に応え
構えたレンズの向こう側
愛しききょうだいの門出を祝う
瞬間を一枚に記録した
‹やるせない気持ち›
お盆を過ぎたら
クラゲが出るから危ないよ
荒れがちだから危ないよ
引かれてしまうから危ないよ
お盆を過ぎたら
誰にも会えないから意味無いよ
‹海へ›
好きの反対は嫌い、じゃなく無関心
嫌いの反対も好き、じゃなく無関心
でも無関心の反対は関心があるで、
其処に一つの感情も伴わない。
ズルいね、と栞を食む。
文字列を追う君は返事もしない。
何もかもオンリーワンに映る視界では
たった一つのナンバーワンになれやしない。
‹裏返し›
鳥みたいに
鈴みたいに
花みたいに
猫みたいに
なれたらきっと
君とは二度と会えないのだろうな
‹鳥のように›
小指を絡めて約束しよう
爪を剥いで交換しよう
目合わす瞳を入れ替えて
終わりまでずっと繋いでいよう
また会いたいの
二人でいたいの
生まれ変わった先で分かるように
でもね
でもね
わがまま言うなら
もっと一緒にいたかったね
‹さよならを言う前に›
悲しい時には雨が降って
嬉しい時には晴天で
つまらない日には吹雪いて
怒り狂えば嵐の様
そのくらいだったなら
こんなに傷付かなくて済んだかな
‹空模様›
夜の窓
止まったレンジ
磨いたシンク
写る黒髪は私ので
白い服も私のもの
後ろに揺れる金色だけが
いつまで経てども分からない
‹鏡›