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8/12/2024, 1:30:15 PM

わん、と震える空気
火の付いたように叫ぶ命
乞い願い待ち望んだ
宙を掻く無力な手足
見たかった透明の奥
聞きたかったその声
知らず微笑み歓喜する
君を、今の君こそを
ずっとずっと待っていた!

‹君の奏でる音楽›


黄色の花弁が揺れている
密な種子を携えて
赤の果実が溶けている
溢れる甘味を止め処なく
青の紙片が揺れている
涼な音色を携えて
無色の氷が溶けている
満たせぬ冷気を止め処なく
小麦の君が振り返る
脱帽、深く礼をして

‹麦わら帽子›


夢を渡って何処へ行こう
曖昧な過去も不確定な未来も
君が望むなら何処へも行こう
誰と歩むかも分からぬ道も
君が選ぶなら其処へ行こう
星を渡り空を渡り
花を越え川を越え
確かに其処へ辿り着くまで
君が迷い挫けぬように
その行く先を然と照らそう

‹終点›

8/9/2024, 1:26:36 PM

終わり良ければ全て良し、
結果より過程が大事、
画竜点睛に蛇足、
行動の捉え方は色々あるけれど。

一番大事なのは、
「自分が何を得たのか」だと。
初めての失敗か、何度目かの成功か、
欲しかった間違いか、必要のない正解か、
次の布石か、前の後始末か、
何もないただ純粋な娯楽だったのか。

掌に落ちてきたモノを全て、
掴んで喰らって糧にして、
自分の選ぶ道を進めるように。

‹上手くいかなくったっていい›


可愛らしく 美しく
華やかで 繊細な

君に
佳人薄命など願いはしない

‹蝶よ花よ›

8/7/2024, 2:00:33 PM

試して 失敗して
間違えて 見つけて
考えて 争って
掬い上げて 探して
努力して 後悔して
それでも それでも
笑顔にしたくて
幸せでいたくて
平和でありたくて
それを それを
皆で必死に積み上げてきた歴史を

【運命】だった、などと
簡単に口にするな

‹最初から決まってた›


熱い太陽にも黒点があるように
暖色より寒色の炎が熱いように
薄光も集まれば全て燃やすように

「勝ち誇ってるところ悪いけど、」
「俺«レッド»が一番強いだなんて、
 誰か言ったか?」

‹太陽›

8/5/2024, 1:35:27 PM

鐘を鳴らす
祝福を 鎮魂を
別離を 平和を
あるいは
鳴らしたいという気持ち一つで
綱を引く
振り被った腕の痛みと
間近に身体に響く音だけを
記憶の隅に残して

‹鐘の音›


つまらない物ですが、と慣用句
でも私は、その人がそう持ってくる
小さく可愛らしいお菓子が好きだった
いつも金色が甘く香り、
しっとりした感じが大人っぽくて

ある日弟と留守番していた時、
ご褒美だよ、と渡された
金色のとろりがたっぷりのお菓子
弟くんと分けてね、と渡された

でも特別を独り占めしたくて、
弟にこっそり一人で食べた
ベビーベッドで眠る弟に
一口も上げずに全部食べた

空っぽの容器がお母さんに見つかって
酷く怒られてなんでか泣かれて、
それから、あの人の姿を見ていない

‹つまらないことでも›


もぞもぞ動くワタと布
それが何やらもにゅもにゅ言い出した所
真っ暗な机の上で筆記音
手帳とノートは今日を呼び合い
アルバムと日記帳は過去を唱う
物語は栞を挟み合って謎を問い
テキストは不明を打ち鳴らす

忘れないでと
覚えておいてと
その夢に書き残す

‹目が覚めるまでに›

8/2/2024, 11:53:24 PM

昔の病院は何処もかしこも真っ白で、
それは清潔感の証明だったという
やがて清潔に慣れ白に慣れ、
すると逆に虚無や消失が連想され、
パステルの柔らかさを、
アイボリーの優しさを、
白の上に装うようになった

けれども人は慣れていく
明るい色も温かい色も
落ち着いた色も穏やかな色も
慣れて慣れて慣れてしまって
装いは次々色を変えて

胎内みたいな真っ赤な部屋で
下手物みたいに真っ青な流動食
一つの汚れも分からない真っ黒な医師が
サイケデリックに輝く薬を出す

でもこれはずっと変わらないのだよなと
銀色を刺す痛みに目を閉じた

‹病室›

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