Open App
2/14/2024, 10:47:26 AM

元は男性から女性へ花を贈る催しが、
女性から男性へチョコレートを贈る催しに変わり、
本命だの義理だの友だの家族だの同僚だの自分用だの、
人間関係を網羅する如く種類が増え続け早幾年。

「で、今年は」
「美味しそうだったんだけど駄目だった」
「ふーん……おい内容読めって普通にシナモン入ってる」
「大々的に書いてなかったからつい……」
「難儀な好き嫌いだよな……」

3×3のケースから、白と黄の入り交じる立方体は一つ欠け。その隣を躊躇いなく取り上げる。
角切り林檎とホワイトチョコ、ふわり甘く香るスパイス。

毎年なんやかんやと理由を付けて差し出される、食べ掛けのチョコレート。

毎年必ず香る"独特"の"甘い"匂い。

口を閉ざす意味を、問い掛けない理由を、沈黙の内に共有して。
昨日も今日も明日も変わらない、この上なく素晴らしい日々を、今年もまた続けるのだ。

<バレンタイン>

2/14/2024, 10:12:24 AM

絹糸は黒く、少しだけ茶を載せて。

黒瑪瑙も良いけれど、煙水晶の揺らぎも捨てがたく。

しろくやわらかな包みは大きめに。
細かな螺鈿も忘れてはいけない。

中身は白を中心に、様々な赤と、一番外側は黄色系。
それと隙間を埋め合わせるのは青。
自立出来る位にしっかり包みに詰め込んだ薔薇の花。

贈る筈だった白い衣装。
噛み破った指先で唇を飾って。
ゆらゆら燃える小さなカンテラを確かに持たせた。

「もう一度、やり直そう」

奇跡の材料は揃えた。
禁忌の境界は越えた。

川の縁に立ち竦む指を
この手に確かに引き寄せるために。

<待ってて>

2/12/2024, 12:03:43 PM

もしもし、元気してる?
私はねー……まぁうん、はい。
全く、人の言う事は一旦聞くべきだったよ。
……後悔はね、しちゃいけないから、しないよ。
まぁこれも君が言ったんだっけね。
あ、そっちって時間有る?無かったら別に良いんだけど、後でまた無駄話に付き合ってよ。
……例の、もう無駄な答え合わせ。今更結果なんて無いけどさ、やるだけやらせてくれると助かる。

「まぁ、私が君と同じ所に行けたらの話だけどね」



ーーーこの番号は、現在使用されておりません。



<伝えたい>

2/11/2024, 11:52:46 AM

「覚えてる?」

「覚えているわ」

「君が花をくれた場所だ」

「あなたと星を数えた場所ね」

「此処で別れて」

「此処で出会って」

「此処で呪った」

「此処で誓った」

「憐れな君、此処をさいごにしよう」

「可哀想なあなた、此処でおわりね」

「……でも、惜しむらくは」

「……ああ、残念ね」

「「最期くらい、その声を聞きたかった」」


<この場所で>

2/10/2024, 2:30:35 PM

誰にも好かれる人とは。

優秀な人?
いいや人間は妬む生き物。
優れている程、秀出ている程、悪意が纏わり付く。

身も心も美しい人?
いいや人間は欲有る生き物。
弱い手、強い手、己の得の為に無惨に毟り取る。

平等で優しい人?
いいや人間は特別を望む生き物。
天秤を傾け、破壊し、その尊厳を踏みにじる。

では、
誰よりも劣悪で、醜く、善性の足らぬ人?
いいや、いいや、それでは関心を得られぬ。
誰もお前を見てはくれぬ。

<誰もがみんな>

Next