・新年
「あけましておめでとう」
と、毎年恒例の挨拶を交わす。
特に面白みも何もない普遍的な挨拶だ。
それでも見知った顔と毎年同じ挨拶が出来ることは俺にとってはありがたい話である。
「今年もよろしくね」
そう笑顔で伝えてくれる君にとっても、毎年同じように訪れるこのやり取りを少しでも喜んで貰えてたら良いのに、と密かに思うのであった。
・距離
モニター越しの君の声。
耳から入ってくる柔らかい音はまるで囁かれているかのように感じるのに、君はどうして僕の隣に居ないのか。
「愛してる」
寂しさを紛らわすように吐いたその言葉はちゃんと君に届いていたらいいのにと、そう願わずにはいられない。
出来れば君の中の僕が誰よりも大きくて身近な存在でありますように。
・終わらせないで
何となく終わりを察してしまった。
こんな時だけ察しが良くなったってちっとも嬉しくない。
今更になって君の考えてたこと、君の見ていたもの、君が求めていたものが分かったところで、君がここから離れることはもう変えられようがないんだ。
本当に愚かでどうしようもないね。
せめて終わりを自身の手で迎えていたのなら、まだ心は穏やかだったのだろうか。
君が下ろす幕を眺めながらそんなどうしようも無いことを考えていた。
・太陽の下で
陽の光が何もかもを照らしてくれるのなら、いっそ僕の内にあるものさえ明るく照らして暴いてくれればいいのに。
陰さえ生まれないほどに照らされて、目が眩んでその場を動けないうちに、僕の全部を君に知られてしまえばいいのに。
そしたら嘘なんかつかなくて済むし。きっと心の底から楽になれるはずなのに。
ぐちゃぐちゃした汚い感情を包み隠さずに、ありのままの自分で、君を真っ直ぐ見つめることが出来るはずなのに。
……なんて幼くて浅ましい考えは、日が昇ってる間に考えることじゃ無いんだろうなぁ。
・夫婦
何もかもを犠牲にして君を優先することは出来ないし、もし僕らが危ない目にあったら君を守れずに呆気なく死ぬと思う。
申し訳ないが君が特別なお姫様に見えることなんて無かったし、逆に僕なんかが王子様にもなれなかった。
でも雪見だいふくを1つあげたり、好きなドラマの感想をいの一番に伝えたり、綺麗な空の写真を撮って送ったり、そんな小さな幸せを分け合えるのは生涯君だけなのは確かだよ。