異雪

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8/31/2024, 12:24:56 PM

・不完全な僕

コイツは言葉が上手く喋れない。それどころか私が何を言ってるかも分かってない。
身体の作りも違うせいで歩き方も変だった。
オマケに皆が当たり前に出来ることが何一つできない。
しかしコイツは主である私への忠誠心が誰よりも大きかった。
「ご飯だよー」
毎日律儀に献上品を差し出す僕(しもべ)は今日も変な言葉を言っている。
全く。たまには私と同じ言葉を喋ってほしいものだ。
「今日もうにゃうにゃ言いながら食べてるなぁ。そんなに美味しいのかな、これ」

8/30/2024, 12:53:00 PM

・香水

私、恋人の前では1番お気に入りの香水はつけたくないの。
大好きな香りを、いつ嫌な思い出に変わるか分からない人にあわせたくないの。
もちろん死ぬまで貴方の一番でいたいし、貴方の一番が私であって欲しい。
でも私の一番は嫌でも私。貴方だってそうでしょう?
だからこの香水は貴方の前では一生纏ってあげない。
せいぜい五番目くらいで我慢してね。

8/30/2024, 3:09:49 AM

・言葉はいらない、ただ……

アンタが娘を愛してることはもう十分に分かったから、とりあえず今は仕事に集中してて。
娘の面倒はとうの昔から慣れっこなの。忙しいのもいつもの事。だから私の事は気にしないで。
それとそのぬいぐるみは娘じゃなくてお義母さんにあげて。きっと喜んでくれるでしょう。
遠慮?まさか。娘はもうおままごとなんてしてないのよ。今いくつだと思ってたの?
父親としての責任を果たしたい?なら適当な言葉や娘へのプレゼントより、払うべきものがあるでしょう。
それが分からないなら私たちのことはもう二度と考えないで。
いっそ無かったことにしてくれた方がまだマシだったから。

8/29/2024, 4:07:01 AM

・突然の君の訪問。

玄関の前で君は甘えた声で私を呼ぶ。
いま手が離せないのに、なんて言っても無駄だからすぐにドアを開けると我が物顔で部屋に入ってくる。
餌ほしさにじゃれてくる君に、ご主人じゃないのになぁって伝えても知らんぷり。こういう所ももう慣れちゃったな。
追い出した所で意味が無いから結局今日も餌を与えて甘やかす。
あーあ。
君がただの可愛い野良猫だったら良かったのに。

8/28/2024, 9:14:38 AM

・雨に佇む

今日は傘をさせなかった。
服が濡れる気持ち悪さ。
身体が冷えてくる感覚。
通行人からの視線。
そんな事よりも、私はただ泣いていたことがバレてしまうのが何よりの苦痛でどうしようもなかった。
だから今日は傘をさせない。少なくとも、誰もいない家に帰るまでは。

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