・君の奏でる音楽
優しく撫でると柔らかい音色。
軽く叩くと跳ねるような音色。
爪で弾くと小気味いい音色。
道具を使うと激しい音色。
締めると高くなっていく音色。
色んな音を奏でてくれる、素直で手のかかる私の可愛いパートナー。
どんなに汚れても綺麗に拭いてあげる。
どんなにボロボロになっても直してあげる。
あなたの全てを愛してあげる。
だから、私が飽きるまで大事に使わせてね。
・麦わら帽子
思い出話。
幼稚園の方針で夏は麦わら帽子を着用していた。
各々が用意する関係で帽子のデザインはみんなバラバラだった。
私のはひまわり柄の帯がついた可愛らしい麦わら帽子で、その帯を見ただけで私の心をひまわり畑へと連れていってくれた。
たった2年間。
しかも夏の期間だけしかかぶることの無かったあの帽子は、今でも思い出の中で幼い私の夏をずっと輝かせてくれている。
・終点
おかしいな。
最初はこっちの方角なんて望んでなかったのに、気づいたら考えていた方向と真逆の方へ向かってたなんて。
不思議だな。
ちゃんと行先は決めてあったのに。なんでこっちにいるんだろう。
悔しいな。
まさか自分がここまで方向音痴だなんて思わなかったよ。
悲しいな。
どうして誰も間違いを教えてくれなかったの。
辞めたいな。
もうどこにも行きたくない。
・上手くいかなくたっていい
「もっとカッコつけたかったのに」
少し不服そうに言う君。
確かに、世間一般のやり方と比べちゃうとちょっとだけカッコ悪かったかも。
しかも一世一代の大勝負。予定通りに決めたかったよね。
でもそんな事、申し訳ないけど私には関係なかったんだ。
君がちゃんと覚悟して決めたこと。
君がそれをちゃんと伝えてくれたこと。
それが分かっただけで、もう十分カッコイイと思ってるよ。
だから、
「こちらこそ、不束者ですが宜しくお願いいたします」
これからも素敵なあなたの傍に居させてね。
・蝶よ花よ
可愛らしいあの子の姿を、私はそう簡単に褒めたりなんかしない。
既に出来上がった"完成品"のあの子を、私は雑に評価なんてしない。
見えない所に彼女の良さと成果が詰まっているのだから、誰が見ても分かるところだけを愛さないでほしい。
僻み?嫉妬?どうぞご勝手に。
私はそんな事で彼女の価値を下げたりなんかしないし、そんじょそこらの人間より私は彼女を分かっているので。
分かっているからこそ、私は彼女を褒めないし評価しない。
ただそれだけ。