NoName

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7/19/2024, 2:11:36 PM

 夜でも、この街は喧騒に溢れている。
 塾講師のバイト帰り、仮にも駆け出しのバンドマンである自分がスーツにメガネというらしくない格好で足早に帰路へ着くのをどこか滑稽に思う。大きな広告のモニターからは、キャッチーなメロディーが流れていて、思わず顔を上げた。
 視線の先、街の象徴みたいなそのモニターから、いつか自分の音楽を響かせられたら。それは、どんなに素晴らしいことだろうか。 きっと、そんなステージはまだまだ遠いけど、いつか必ず。
 なんて、そんなちっぽけな対抗心を抱えながら、昨日思い付いたばかりの“自分の音楽”を口ずさむ。
 ネオンライトが、昼さながらの眩さで道を示していた。

7/19/2024, 2:22:22 AM

 私だけがこの世界に生き残ったらどうしよう、って考えたりする。
 バイトがうまく行かなかったとき、友達と喧嘩しちゃったとき、理由はないけど何もかも嫌になったとき。私だけが世界にいて、自分のことしか考えなくてよかったら楽だろうなと思う。
 それで、好きなだけ寝て、食べたいものを食べて。
 そうやって連想ゲームをしていると、寂しくなったときに電話する親友はやっぱりいてほしいとか、テレビが静かだとつまらないのであの駆け出しのアイドルグループはいてもいいなとか、心配性の兄が作ってくれるご飯は美味しいから週一くらいは食べたいなとか。
 色々頭の中で生まれていって、結局世界には私一人ではなくて、騒がしくなって、楽しくなってしまうのだ。