『日差し』
扉から出ると、
日差しは眩しさと痛さ向けてくる。
まるで私が出てくることを反対し、
攻撃しているかのようだ。
このままでは負けてしまう。
意を決して、今日も私は、
日傘を盾にして、日刺しから自分を守る。
いつもより、桜がきれいだった。
夕方になると、風が心地よいと感じた。
金木犀の花を初めて見ることが出来た。
ひんやりとした空気と暖かい太陽が気持ちよかった。
一緒に歩いたあの日々。
全部、あなたがいたから気付けたんだよ。
相合傘は、小さな世界だ。
そこに入れば、私と君だけの特別な空間になる。
これ以上、誰も入ることが出来ない。
君の鼓動、匂い、体温が伝わる。
これ以上、君に近付いても誰にも怒られない。
相合傘は、小さな静寂だ。
外だけが騒がしい。
肩を濡らす雨粒が、私の邪魔をしてくる。
「もう少し、この小さな世界が続かないだろうか」とわざと慎重に歩く横で、足早に歩く君がいる。
相合傘は、小さな社会だ。
1つの傘を共にした2人の人間でしかない。
真ん中にある傘の柄は、超えることの出来ない心のラインなのだろうか。
あと100m、雨はまだ止まない。
1年前の私は、福祉の相談員の仕事をしていた。
今は、何者でもない。
1年前の家には、大好きな愛犬がいた。
今は、もういない。
1年前の推しは、6人でデビューを夢見ていた。
今は、5人でデビューしている。
1年間で色々変わった。
こんな未来になっているって想像していなかった。
できれば、想像したくなかった未来。
この先も、こんなことは沢山あるのだろう。
できれば、笑顔になれる変化があるといいな。
紫陽花の花びらだと思っていたところが、実は葉っぱだということを彼は教えてくれた。
私は、彼のそういうところが好きだ。
彼は、老若男女問わず人気のアイドルである。
同世代にも関わらず、どこか古風な言動とそれに合った名前である。
一方で、ギターを弾き、ジージャンや革ジャン好む一面もある。
私が想像するTHE 漢といった男である。
そんな彼がある日、ファンに向けたブログで書いていた内容が紫陽花の花の話であった。
私の身近にいる男性はあまり花に興味がないため、自然と「男の人は花に興味がない」という偏見を持っていた。
だからこそ、彼が花のことを書いていて驚いた。
いや、彼は以前から花について触れることがあった。
とあるラジオで、祝いの花を彼が貰った際に、当時の季節ではあまり手に入らない花が花束に入っていたことに気付いて、
「これ、今ではあまり出回ってないんだよ!?」
と言っていた。
何気ない彼からの一言に、私は胸の奥をぎゅっと掴まれた気がした。
その頃、偶然にも、私自身も花束を購入しており、入れて欲しい色があるとお願いをしたが「今、市場で出回っていないので入れられません」と断られてしまっていたから尚更、彼の気付きに感動したのかもしれない。
些細な出来事であるが、私が彼を好きな理由がこういう所にあるのだと改めて感じた瞬間である。
きっと、私はこれから、紫陽花を見るたびに彼の言葉を思い出し、その度に彼をより好きになるのだろう。