冬が終わりかけて、青い芽から薄紅色の花が咲いた。ずっと見守っていた花だったので、嬉しくて、愛らしい花びらにそっとキスをした。
1000年後の人達は、歴史の教科書が分厚くなって、テスト範囲も広くなって、大変だろうなぁ。
(今日は、あまりやる気が出なかったので、こんなことしか書きませんでした。ごめんなさい🫠💦)
ドイツに住むソフィアは、想いを寄せていたディルクに、ディルクの好きな花をつもうと思った。
その花は、綺麗な青紫色で、水辺に沢山咲いていた。
崖を降りようとしたが、ワンピースの裾が足に引っかかり、うっかり滑らせてしまった。
そのまま下へ落ちてしまい、水の中へと消えてしまった。
ディルクもソフィアのことが気になっていたので、死んでしまったのが、悲しくて仕方なかった。
毎日、ディルクはソフィアのお墓にあの花を供えた。
ある水曜日、ディルクはソフィアのお墓に、花と一緒に手紙も添えた。
手紙には、 『 ソフィアへ 君のことは忘れないからね。ソフィアも僕のことを覚えててね。見守ってくれたら嬉しいな。 ディルクから 』
と、書いた。
勿忘草は、ドイツ語で「Myosotis sylvatica」。
私を忘れないでという意味。
私はここが嫌いだった。
緑の草に、羊が沢山いて、分厚い綿雲が、草原に大きな影を作るだけ。
大きくなって、街に出た。あそことは違って、お店が沢山並んでいた。嬉しくて、そこにずっと居た人みたいに、気取って歩いた。田舎で着ていたワンピースが、地味に見えて恥ずかしくなった。
お洒落なお店で新しい服を買った。白いブラウスに、薄紅色のカーディガン、千草色のスカートの上に、赤茶色のベルトをしめた。
いつもはお団子にしていた金色の髪もほどいた。
少し人気のないところに行った。それでも、私にとってはやっぱり街中だった。
黄色い目の白猫がひょこひょこと走っていた。
猫につて行った。
いつの間にか、知らないところに来ていた。そこは、狭い路地で、ボロボロの服を着た人達が地べたに座っていた。お金をくれと言われた。あいにく服を買って、あげたら自分のが無くなってしまう程だったので、「服を買ってないので、あげられません、ごめん」と、事情を説明した。「分かった」と言ってくれるのを想像していたが、そうではなかった。「なんでだよ、くれるまで帰さないぞ」と、キラキラ光るナイフを見せてきた。何が何だか分からなくなり、その場から走って逃げようと、勢い良く振り返った。
全速力で逃げた。後ろを向かずに走った。
人気(ひとけ)のある街に戻った。
まだ胸がドキドキしていた。追ってこなかったのが、不幸中の幸い
一旦家に戻ることにした。電車に乗って、家に1番近い駅で降りた。靴を手に持って、草原を走って、勢い良く家の扉を開けた。お母さんが立っていた。
「早かったね」と笑顔で言われ、一気に緊張がほどけて力が抜けたみたいだった。
前はあんなにここが嫌いだったのに、広い草原も、赤く染った夕焼けの広がる空も、全てが美しく見えた。
旅路の果てに、そこの素晴らしさが分かることもあるということを知ったみたいだった。
町外れの草原で、私は小さな男の子に出会った。
その男の子の瞳は、お日様に照らされる海の表面みたいに輝いていて、深海みたいに深く、岩にあたって砕ける波のように透き通っていた。そんな瞳に見守られていたのは、少し枯れてきた草の生える草原に咲く、小さな白い花だった。もう、頬を撫でる風が冷たくなった頃だったが、そんなことはかまわず、その花は活き活きと一生懸命咲いていた。
「花、可愛いね」、思わず男の子に話しかけてしまった。初めて会った女の人に、急に話しかけられたら怖いだろう。ごめんと言おうと口を開こうとした時、「うん、この花可愛い」と、私の琥珀みたいな目をみて、話してくれた。じっと見てきたから、深くてキラキラと星の散るような瞳に目を逸らしてしまいそうになった。
その男の子は、穏やかに流れている川の近くに住んでいた。その家から、お母さんとお姉さんが出てきた。そして、「そろそろ戻っておいでよ!」と、男の子を呼んでいた。花を眺めていて、家に戻るのに時間がかかりそうだったから、「お母さんたちが呼んでたよ?」と言うと、「分かった」と言って、家に戻って行った。
3ヶ月ほど経って、またあの草原に向かった。
またあの男の子はいるだろうか、またあの眩しすぎる瞳で見つめ返してくれるだろうか。
草原を見渡した。居なかった。そこにあったのは、1輪だけで、寂しそうに咲いている花だけだった。
体が勝手にあの子の家へと向かっていた。ドアをノックして、あの子が出てくるのを期待していた。
出てきたのは、あの時のお姉さんだった。
「どちら様ですか?」と聞かれた。「この前、あの花の咲いている草原で、綺麗な瞳の男の子と話したんです。久しぶりにここに来て、あの子、いるかなって思ったんですけど、居なかったので、どうしたのかなと思って。」「あぁ、ノアのことですね。今寝込んでるんです。誰かに移る病気ではないんですけど、2ヶ月くらい前から、体が動かせなくて」と、青い目を涙で潤ませた。「会えませんか?」ダメ元で聞いた。1度しかあったことの無い大人を家に入れるはずがない。知っていたが、期待3割で聞いた。少し驚いた顔をして、「いいですよ。あなたのことは、ノアからも聞いていたんですよ。会えて良かった」と、嬉しそうに言ってくれた。
男の子の部屋まで案内してくれた。
「あの花、まだ咲いてるの?」と、私の顔を見た途端に聞いてきた。覚えてくれていたことに驚いた。「うん、あの時と変わらずに、元気だよ」と言った。「良かったあの花見たかったんだけど、見れないから嫌なんだ」と真っ直ぐ私の目を見て話した。「つんできてあげようか?」と聞くと、「いい、あの花は、あそこに咲いていなきゃダメなの。」と、涙目で言った。分かったよと、頷いた。「また会いに来るからね」と、今までで1番明るい笑顔を見せて帰った。
あの日からしばらくして、家に一通の手紙が届いた。知らない住所からだった。
『ノアが 死にました 。来てくれてありがとう。 』
信じられなかった。すぐには涙が出なかった。
まだあんなに小さくて、まだ瞳はすんでいたのに。
何時間か経って、大粒の涙が目からこぼれた。
私はあの草原へ行った「また会いに来るからね」
花に向かって呟いた。
あなたに思いを届けたい