# お金より大事なもの
お金
しょうなり
命
しょうなり
?
このクイズの先に、何が来るかな。
はてなに何かを当てはめることができた人は、どれくらいいるのかな。
生存本能を超えた先にある景色を見ることは、きっと人間にしかできない。
自分用追記
昔、「手段と目的を履き違えるな」という主題の論説文を読んだ。みんなの言葉を読みながら、ふとそれを思い出した。
手段と目的を混同してはいけないね。命もお金も健康も手段のひとつと考えると、思い出や愛や人間関係といったものは、目的。それらを同じ土俵で比べるのは、おそらく不可能だ。
それでも無理やり比べるとすると、手段というのは目的のもとに存在するものだから、やっぱりお金は価値の低いものになるのかな? でも、目的自体の価値が高いのだから、そのために存在しないといけない手段もまた価値が高くないとだめなのでは? 生きるためにお金が必要なのは、そういうロジックで成立しているようだ。
「手段と目的」、表裏一体のコインみたい。対比的なようで、どこかで強く結びついている。
# 月夜
夜が好きで、暗闇が好きで、日陰が好きだった。
地球上で最も大きな日陰である夜は、僕が唯一寛げる場所だ。
だから僕は月夜が嫌いだ。
太陽から逃げた先で、今度は月が追いかけてくる。
だれにも見られたくなくて、陰に潜むように必死に生きていたのに。
綺麗だと誉めそやされるそれに、いとも簡単に安全地帯を奪われる。
誰か、僕を隠してくれ。
布団の中で、月に怯えて叫ぶ夜。
# きっと明日も
感傷に浸るのが好きだ。
感情的な小説を読むのが好きだし、感動的な歌詞を味わうのが好きだし、悲劇的な物語を見るのが好きだ。
そうして、まるで自分が悲劇のヒロインにでもなったような顔をして、ベッドの上で静かに涙を流すのが好きだ。まるで可哀想になれた気がして。誰かに可哀想だと思われる気がして。
今日も私は暗い顔をする。
被害者を装って悲しみに打ちひしがれる。
きっと明日も。
# 落下
万物は重力に引かれている。
ニュートンよりもずっと前から当たり前だったその言葉を、私は今更になって意識する。
重力に引かれることを「落ちる」と言うのなら、私たちは今もなお落ち続けているのだ。
鉄球がすとんと落下するように。
鷹が一直線に飛ぶように。
老いた花弁がはらはらと揺れるように。
葉っぱが風に閃くように。
水切り石がゆらゆらと水面に吸い込まれるように。
流星群がさざめくように。
全てのものは落下する。
この景色に見覚えがあるのは、きっとそれが理由だ。
前世が何だったのかは知らないけれど、前世の私は落下して命を終えた。それだけは妙な確信を持って言える。
見下ろす視界が落ち着くのも、それが理由だ。
眠りに落ちるように、私は一歩足を踏み出す。
ぷかぷかと浮かんでいく泡を見る。
ああ、落ちないものもあったんだ。
私はそんなことを思う。
ゆっくりと、落下している。
# 正直
「正直さ、」
この言葉で始まる台詞が嫌いだった。
これの後には大抵悪いことが続く。高確率でアドバイスという名の悪口がくる。そしてそれを放った本人は、自分は良いことを言った、コイツのためになるアドバイスをしてやったとでも言いたげな顔をする。
こんなことを言う人は大体が自分のことしか考えてない。言われた人の気持ちを考えていない。僕を言い負かして爽快感を味わい、アドバイスできるほど優秀な人材なんだと誇示したいのだ。そんな奴の身勝手な欲望に付き合わされてる事実も腹立たしいし、そんな奴の軽薄な行動で落ち込んでいる自分が情けない。
正直さ、お前って結構馬鹿だよな。
正直さ? 何が正直さ?
なんで傷つける側の奴が、「言わずにはいられない」「お前のせいで言わざるを得ない」みたいな雰囲気出してんの? お前が僕を傷つけたくて言ってるんだろ? 自分が人を傷つける言葉を吐いているということは認識してるから、そうやって自分を正当化するみたいに「正直さ、」って前置きで自分は悪くないって暗に伝えようとしてるんだろ?
言葉が明確な悪意を持って使われる時ってのは、案外少ない。
代わりに、「完全に悪い言葉とは言えない言葉」が持つ微妙なニュアンスが、人を静かに傷つけることがある。静かに忍び寄って、誰も気付かないまま殺す、暗殺者みたいに。