入木

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1/5/2023, 12:24:52 PM

「消えるならこんな日が良いな」
彼女はベランダで煙草をふかしながら言った。
外は朝日に照らされた、雪が輝いていて、
「雲海みたいで綺麗じゃない」
それはいつか乗った飛行機からの景色に似ていた。
「天国の景色もこんな感じなのかな」
感嘆で漏れた息が白く輝く、
魂に色があるなら、きっとそれはこんな色だろう。
「綺麗でもやっぱり朝は冷えるね」
そう言って笑う笑顔には、
一つの陰りすら見つけられなかった。
「でも、こんな朝が好きだな」
私も冬晴れの朝が好きだよ。
「日の有り難さがわかるじゃない」
そうだね、
でも、寒くないと、
暖かさの価値がわからないのは、
悲しいことだと思うよ。
「こんな朝に思い出して」
笑顔で吐いたタバコ混じりの白い息は、
白銀に輝いて、
それは命そのものに思えた。

#冬晴れ

12/26/2022, 11:10:40 AM

永遠は無いと知りながら、
それも求めるのは愚かだろう。

いつの間にか歳をとった。
年の暮に思うのは何度目だろうか。
変わらない様に見えても、
何か変わっているのだろうな。
俺も街も何もかも。

よく行ってたあの店も潰れたよ、
安酒で吐くまで呑んだあの店も、
小洒落た喫茶店に変わってたよ。

変わらないのは呑んでる面子だけだな。
何時まで続くかな。
知らないけど、来年は呑んでる気がするよ。

変わらないものはないけど、
出来るだけ続いたら良いよな。

またくだらない話をしよう。
また歳をとったなんて言いながら。

#変わらないものはない

12/23/2022, 11:31:15 AM

降る雪と煌めく照明は、
誰かの誕生を祝っている。
道行く人は誰もが幸せに見えて、
歩く足元に目線をそらす。
聞こえるのはクリスマスキャロル、
止めてくれ、結局それは無駄だったじゃないか。
ただ静かに祈らせて。
あの灯りだけは消さないように。
それが与えられる物だから。
その為の祈りだから。

#プレゼント

12/22/2022, 2:14:39 PM

ゆずの香りを漂わせ
我が物顔で街を歩く彼女は
恐れなど知らない

それは強さか若さか
あるいは愚かしさの現れか

真ん中を歩く彼女は
後ろの私を気にしてか
時折に振り向いて

そんな価値は無いよと
苦笑する己には
真ん中を歩く資格は無いと悟って

汚れなき人
後ろから見守らせて
汚れなき人
愚かしいままでいて
汚れなき人
振り返りはしないで
汚れなき人
そこから消えないで

何れ、背が視界から消えても
ゆずの香りにて思い出させて

#ゆずの香り

12/21/2022, 10:38:19 AM

久し振りに見上げた空を、
大きな鳥が横切って行った。

遠い空の果ては続いてて、
幾つもの国や何億もの人が居るらしい。
知ったこっちゃないが。

好きなだけやってくれ。
好きなようにやってくれ。

私はこの手の内で精一杯だ。
何も自由になりゃしない。

あの鳥は空を渡るのだろうか、
知らないが渡るなら伝えといてくれないか。

勝手にやれよ、こっちも勝手にやるよ。
会えたなら、その時はよろしくな。

空を見上げる余裕くらいはあったらいいな。
お互いにな。

#大空

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