久し振りに見上げた空を、
大きな鳥が横切って行った。
遠い空の果ては続いてて、
幾つもの国や何億もの人が居るらしい。
知ったこっちゃないが。
好きなだけやってくれ。
好きなようにやってくれ。
私はこの手の内で精一杯だ。
何も自由になりゃしない。
あの鳥は空を渡るのだろうか、
知らないが渡るなら伝えといてくれないか。
勝手にやれよ、こっちも勝手にやるよ。
会えたなら、その時はよろしくな。
空を見上げる余裕くらいはあったらいいな。
お互いにな。
#大空
あの音を止めてくれ
あのけたたましく鳴るベルの音を
俺を引き戻さないでくれ
良い夢を見ていたんだ
誰もが幸せな世界の夢を
孤独とか戦争とか
争いとか諍いのない
そんな素晴らしい世界の夢を
誰もが幸せな夢を
その音を止めてくれ
そのけたたましく鳴るベルの音を
俺を引き戻さないでくれ
まだ夢を見せてくれ
#ベルの音
冬の夜空はやけに透明だということを、
今更になって思い出した。
あのどこまでも深い穴のような空を、
なぜ忘れていれたんだろうか。
綺麗と笑う、君の吐き出した息の白さが、
その色をより際立たせた。
一緒に落ちてはくれないか。
あの穴の中ででも、その白ささえあれば、
気を違えずに居られそうなんだ。
冬の夜空は透明だから、
白さだけが際立った。
#冬は一緒に
終わりは忍び足でやって来て、
後背を鋭く刺して来る。
樅の木の擦れる音で聞こえなかった。
あるいは私の愚かさ故か。
こんなになるまで気づかなかった。
離れていく足音を聞いている、
足元に降るのは雨か。
いっそ雪になれば良い、
降る音を聞かずに済む。
こんな愚かな者から溢れる音など、
雑音でしか無いのだから。
#雪を待つ
蹲って手を見ていた。
生命線は途切れてて。
優しい人ねと占いの人に言われた手相で、
優しさだけで生きてられたら良いのにね。
窓を見る、暗がりの部屋に自分が映る。
自虐の笑みが張り付いていた、
卑屈な皺は罅割れに似てる。
素面になるなよ、酔いが足りない。
安酒を飲み干す、酒精にて誤魔化して。
空っぽに追いやって、吐気と一緒に吐き出して。
内臓ごと捨て去って、いっそ全部消えさせて。
蹲る、ここは逃げ場所ではない。
遡る、そこは行き場所ではない。
せめてここから消えさせて。
#部屋の片隅で