冬の夜空はやけに透明だということを、
今更になって思い出した。
あのどこまでも深い穴のような空を、
なぜ忘れていれたんだろうか。
綺麗と笑う、君の吐き出した息の白さが、
その色をより際立たせた。
一緒に落ちてはくれないか。
あの穴の中ででも、その白ささえあれば、
気を違えずに居られそうなんだ。
冬の夜空は透明だから、
白さだけが際立った。
#冬は一緒に
終わりは忍び足でやって来て、
後背を鋭く刺して来る。
樅の木の擦れる音で聞こえなかった。
あるいは私の愚かさ故か。
こんなになるまで気づかなかった。
離れていく足音を聞いている、
足元に降るのは雨か。
いっそ雪になれば良い、
降る音を聞かずに済む。
こんな愚かな者から溢れる音など、
雑音でしか無いのだから。
#雪を待つ
蹲って手を見ていた。
生命線は途切れてて。
優しい人ねと占いの人に言われた手相で、
優しさだけで生きてられたら良いのにね。
窓を見る、暗がりの部屋に自分が映る。
自虐の笑みが張り付いていた、
卑屈な皺は罅割れに似てる。
素面になるなよ、酔いが足りない。
安酒を飲み干す、酒精にて誤魔化して。
空っぽに追いやって、吐気と一緒に吐き出して。
内臓ごと捨て去って、いっそ全部消えさせて。
蹲る、ここは逃げ場所ではない。
遡る、そこは行き場所ではない。
せめてここから消えさせて。
#部屋の片隅で
眠れない夜は、祈ります。
内容は些細な物から大きな物まで。
明日の天気や食事の事から、
身体のことから世界の事まで。
様々な事を祈ります。
けれど、最後に祈るのはいつも同じなのです。
あなたの事を祈ります。
身体を壊しませんように。
心を病みませんように。
泣いてなどいませんように。
笑っていますように。
幸せでありますように。
どうか明日は幸せでありますように。
眠れないほど祈るのです。
#眠れないほど
昼は明るすぎて、夜は暗すぎるから、
夕暮れが好きだった。
人の顔も曖昧で、
なおかつ周囲が見渡せる。
それくらいの明かりで良かった。
それくらいの暗がりが良かった。
顔も知らない僕たちは、
寂しがりのハリネズミに似た、
刺々しい優しさしか持てないから。
傷付け合わない様にそっと離れた。
時期に暗闇に溶けるから。
忘れないようにそっと伸びた影で口付けた。
#光と闇の狭間で