昼は明るすぎて、夜は暗すぎるから、
夕暮れが好きだった。
人の顔も曖昧で、
なおかつ周囲が見渡せる。
それくらいの明かりで良かった。
それくらいの暗がりが良かった。
顔も知らない僕たちは、
寂しがりのハリネズミに似た、
刺々しい優しさしか持てないから。
傷付け合わない様にそっと離れた。
時期に暗闇に溶けるから。
忘れないようにそっと伸びた影で口付けた。
#光と闇の狭間で
気が付くと路上に転がっていた。
ぼやけた頭でやけに青い空を見ている。
最後の記憶に残るのは、
横断歩道を渡る所と後ろからの悲鳴。
錆びついた脳でも理解は出来た。
あぁこれは死ぬだろうな。
きっと、そうだろう。
手足の感覚がわからない。
痛みすらないから。
こんな風に死んでいくのか、
こんな事で死んでいくのか。
意味も知らず、訳も分からず。
殺した奴の顔すら知らずに死んでいくのか。
まぁ良いか、どうでも良いか。
俺の人生みたいだな。
青空が暗く薄らんだのは、
俺の瞼か。
最後に思い出すのは、貴方の顔。
泣いてる貴方の顔。
あんまり笑わせられなかったな。
ごめんね、泣かないで。
#泣かないで
冬とは終わりの季節だ。
皆なにもかも枯れ果てて、
何かに耐えるように縮こまる。
チラついた雪を眺めて思う。
冬の全てを儚く思えるのは、
きっと己の事そのものだからだ。
この掌でほどけた、雪の結晶と同じだからだ。
春には私も溶けるだろうか。
積もるであろう雪と一緒に。
枯木は咲くだろうけど、己は疲れた。
煙草に火を灯す。
吐いた煙は息の白さか、
それも分からずに。
#冬のはじまり
劇を見ていた
人の一生、生まれてから死ぬまでの物語。
波乱万丈、山あり谷あり。
出てくる人は皆、それぞれの魅力で溢れていた。
誰もが苦悩しながら、
時には喜んで、時には怒って、
時には涙して、時には笑ってた。
時間を忘れて、夢中になって見ていた。
気が付けばエンドロール、
主人公が死ぬシーンで終わり。
カーテンコールが鳴り響く。
死んだはずの彼らが段上へ上がる。
行かないでくれ、終わらせないでくれ。
役者が一礼して、万雷の拍手と共に幕が下りる。
私をここに置いてかないでくれ。
劇場の明かりが灯され、席を立つ人々。
私は立ち上がれなかった。
私は観客のままだった。
#終わらせないで
揺蕩うような感覚で、今日を泳いでも。
高潮に攫われて、明日へ流されて。
終わらない微熱みたいに、
なんとなく怠い日々を過ごす。
いっそ、もっと熱くして、
全部燃やしてくれたら良かった。
揺蕩う水さえ無くしたら、
きっと歩くしか無いのに。
揺蕩う熱に溺れてた。
#微熱