入木

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11/21/2022, 10:41:03 AM

「愛されたかった訳ではないのです。
許されたかっただけなのです」
震えた声で彼女は語る。
「優等生でいました、そうすれば褒められる気がしたから」
彷徨きながら、その場をぐるぐると回りながら。
「テストで良い点取りました、褒めてくれたから」
落葉を蹴散らす音は声と共に大きく。
「殴られても笑いました、良い子だって言われたいから」
一際大きく落葉を蹴り上げて、彼女は止まった。
「全てやりました、許されるために」
小さな声で堪える様に絞り出した、
「どうすればよかったんですかね?」
口角を歪めた、その顔は自嘲な薄笑いで満ちていて。
「許されたかっただけなんです」
夕日が彼女の顔を照らす。
「愛してくれなんて言わなかったのに」
日に輝く涙だけが美しく。
言うべき言葉など見つからなかった。

#どうすればいいの?

11/19/2022, 6:05:40 PM

キャンドルの火が消える頃に、
この部屋を出よう。
暖かな灯に慣れる前に、
この部屋を出よう。
さよならの言えるうちに、
目が慣れぬ内に、
暗闇で生きていけるように。
光など求めないように。
火をそっと溜息で吹き消した。
白い煙が後悔の様に残った。

#キャンドル

11/15/2022, 12:54:28 PM

子猫がいた。
そこにいたんだよ。
もういないけど。
いってしまったから。
ぬくもりだけを残して。
明日には俺も消えるよ。
あんたはどうする?

#子猫

11/14/2022, 1:13:05 PM

降る秋の風は湿った土の匂いがした。
11月の昼下りは、肌触りに冬を混じらせた。
ブーツに纏わりつく落葉は夏に置き去った後悔か、
足取りを少し躊躇わす。
遠くへ行こう。いま決めたのだ。
秋の日は心もとなく、影は薄ぼやけ。
落葉を蹴散らす、秋風は味方ではなく。
だが、それが心地よかった。

#秋風

11/11/2022, 1:34:41 PM

「翼なら持っていたんだ、ずっと昔から」
枯れかけた翼を触る、手は美しく細い。
「空も飛べたんだ、きっと昔なら」
弾んた声は小鳥のように高い。
「飛んだことは無かったけど、
そんな気がする」
言い訳を重ねる様に声は声は落ちる。
「けれど、もう遅い気がする」
翼を撫でる手が震える、
傷のない、柔らかな手が。
「羽も枯れて落ちたんだ、どこに行けると?」
重力に負けたその身では、
余りにも空は遠すぎる。
「それに飛ぶにはもう重すぎるから」
重いのは体か、それとも心か。
「飛べたんだよ、きっと昔なら」
言うその言葉だけが軽かった。

#飛べない翼

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