『胸が高鳴る』
夏の夜の蒸し暑さと
涼やかに
しかし逞しく咲く千輪菊の
相反するような風物詩が
見事な調和をみせている
喧騒も今は
ただ心地よい旋律で
街の全てが浮かれている
来年はもう少し
花火の種類を覚えて来よう
きっとそのほうが
鮮やかな思い出になるだろう
『不条理』
虫をがんじがらめにする女郎蜘蛛
その巣を破って蜘蛛を喰らうカマキリをみて
虚しさだけが吹き抜ける
まさに不条理
まさに理不尽
この二つは微妙に違うらしいが
今の自分には関係ない
カマキリは何処かに消え
破れた巣に朝露が光る
それが少しは救いになるか
庭の虫も静まり返った
さぁそろそろ人生を歩もうか
立ち向かってみようじゃないか
『泣かないよ』
もう大丈夫だ
ホラー映画で泣く事も
指の火傷で泣く事も
もう昔のことだから
君を失くした時には
屁理屈捏ねて泣かなかった
急な別れではないのだからと
泣くのは疲れるからと
多分あの子は望んでないからと
でも心には
刺青を入れる痛みのように
何か印を刻んだはずだ
まだそれを見つめる勇気はない
泣くと疲れてしまうだろうと
またくだらない事を思う
真正面から受け止められる
そんな事があるだろうか
日々疑問に思いながら
墓前で無理に笑っている
『怖がり』
ただ暗がりが苦手
夜に鳴く虫も駄目
凍るような家の廊下も
怖がりで
ちっぽけな私は
布団に包まって耐えている
夜にさえずる梟も
異音にしか聞こえない
もう出よう
ここから出よう
朝5時に鳴る寺の鐘が
徐々に白んでいく空が
家の前を通るバイクの音が
聞こえて初めて安堵していた
そろそろ卒業せねばならない
もうじき桜の咲く頃だ
弱い私をきっと連れ出してくれる
満開の季節がやってくる
『星が溢れる』
オーロラも臨める国で
僕は絵手紙を描いている
君は南十字星の見える国で
今頃眠っているのだろうか
オーロラを描いて
君に贈ろう
きっとそこでは見れないから
よければ君も
夜空に光る南十字星を
僕に贈ってくれないか
いつか
いつか会えたなら
二人で流れる星を見よう
北でも南でも構わない
星座盤を二人で掲げ
煌めく夜を見上げよう