3 寂しさ
14……15……16……。
ああ、満たされない。
89……92……98……。
まだ、満たされない。
129……150……176……。
223……348……388……。
人はなぜ、寂しさを感じるのだろう?
このよくわからない、寂しさはどこからやってきたのだろう。
どうしたら満たされるのだろうか?
ジュッ……と音が立つと同時に、肉が焼けるような、だが、それは、牛肉や豚肉などが焼けるときの食欲をそそるような香ばしいにおいではなく、不快なにおいが部屋に充満した。
「んー、398回目だけど、全然満たされないね?」
ごつごつした細い指は、紫色の紫煙の煙草をくゆらす。葉を細かく挽き紙で巻いたそれを、薄く形の良い唇が吸う。
「そんなに怯えないで。そんな顔されたら、俺も辛くなっちゃうじゃない?」
にこにこ微笑む男は、煙草を押しつけられて焼けた者の傷を、そっと撫でた。
「痛かった? ごめんね?」
心配そうに声をかける男は「んー」と、細く長い指をあごにあて、
「やっぱり、お口も焼いちゃったから満たされないのかな? 声、必要だったかも」
そう言い、残念そうに肩を落とす男だったが。
なにか閃いたようにぱっと顔をあげた。
「もしかしたら、俺の存在を必要とする人が現れたら、このモヤモヤした寂しさから解放されるのかも」
穏やかに微笑む彼はまるで天使のようだった――。
2 冬は一緒に
今年もかれと一緒に過ごせて嬉しい。
昨年もかれと過ごせて嬉しかった。
来年も一緒に過ごせるかな?
ねえ、冬のいいところってなんだと思う?
……え?『二人で寄り添えば寒くないところ?』うふふ、確かにね、お互いの温かな血潮を強く濃く感じられる季節って冬だものね。
うん?『夏でもずっとくっついてるから季節は関係無いけどね?』 もう……!
わたしは冬が好き。
雪降る夜中の田舎道でわたしたちは出会った。
すれ違いざまに、見ず知らずのわたしを襲ってきたかれ。
わたしの着てる服を荒々しく切り裂くと同時に、腹が減っている猛獣のごとく、わたしの体を貪った。そして、待ちきれないとばかりに、乱暴に押しこもうとするモノに驚き目を見開く。
だけど、わたしは雄の本能というものに、ひどく興奮して欲情してしまった。寒かったけど、肌がこすれあうたびに、かれのぬくもりを感じた。
わたしは冬が好き。
――あれから五年。
今年の冬も、かれと一緒に過ごします。
かれは、どうしてか、動かなくなってしまったけれどね。
1 とりとめもない話
「今日は家にくる?」
「――の好きなゴーヤチャンプル作ったよ」
きみの笑顔に癒される人がここにいる。
きみの言葉は安らぎを与える魔法であり。
二人交わす時間。思いだすほど、優しく光り。
そして、かけがえのない宝物になってゆく。