そうね、ルールの範囲内で色々考えてやるのよ。ルールの穴っていうかね、どうしても整備が甘いっていうかね
うん、もちろん次のシーズンに変更があるんだけど、そういうせめぎ合いがまた面白いのよ。
え? イカサマ? 違う違う。やっちゃダメよ。イカサマは。それは、違反をしてるからね。
皆最初はやるのよそれ、ダメよ。
うん、ルールは破るためにある?
違う、違う、ルールの範囲内で出来る事をやるのよ。
あ、そういうやり方あったんだぁ、みたいな時が気持ちいいのよ。
俺はルールに縛られたくない?
自由だ?
よしわかった、あっちに行こうか?
もう、ここには来ないでね。
先週? ああ、先月か
告白したよね?
そして、今日も? だって、フラれたんだろ?
今日は今日で、心模様が違う?
違うかもだけど、一緒かもだろ。
ダメならどうすんの?
やめろよーー。そういうプロレス的なやつ?
「フラれる事先に考えるやつがどこにいるかよーー」
みたいなのわからないから。
いいよ、頑張れよ。お前の一貫した心模様に驚くよ。
え? 俺の心模様?
まぁな、お前が告白するたびに、ドキドキはしてるよ。
だ、か、ら、
フラれろって思ってるよ。
ああああ、ゴメンゴメン。
俺も好きだから・・・
ちょ、そこのしょう油とって、うん、ソースじゃなくて、魚のフライはしょう油なのよ。
え? 俺? 学科のテスト?
落ちたよ。落ちた。
だってさぁ、俺だって正解っちゃ正解なんだぜ!
たとえ間違えてたってさぁ、正解なんだぜ!
うん? どんな問題?
確か、
原付は50キロ以上で走ってはいけない。
〇か×か?
30キロだから×なんだってよ。
あのさぁ、原付で50だすのなかなかだぜ?
うん?
こっちがソースだった?
ごめんショックで味せんわ。
「どうした二宮」
俺が部長との話を終えて、自分の席に戻ろうとした時、異変を感じた。
グスン
というオフィスではあまり聞かない音を聞いたせいだ。不意に向かいの席の二宮を見ると、顔は無表情だが、液体が顔から溢れていた。
「うん? どうした」
もう一度聞く。二宮のパソコンには
「しずく」という文字が溢れていた。
「先輩、しずくってこんな綺麗な漢字なんですね」
その文字の羅列の最後には
「雫」
と、書かれていた。
こいつは結婚して3年。子供が生まれてもうすぐ一年だ。
「何かあったか?」
「僕、食器拭き担当なんです・・・」
聞けば、育児ノイローゼ気味の奥さんに、食器の拭き残しのしずくの事で、毎晩怒られているらしい。
「頑張ってるんだな」
「しずくって、こんなに綺麗な漢字なんだ」
今の俺には何も出来ない。肩を叩き、自分の席に帰ろうとした。
そこで、ふと二宮のパソコンにしずくが落ちている事に気づき、ティッシュで拭こうとした。
「やめください!! こいつだって、こいつだって、僕の目から溢れた雫なんです! 大事な大事な雫なんです!」
二宮はすごい剣幕だ。
「わかった、わかった」
俺は慌てて、自分の席に戻った。
あいつはやっぱり疲れてる。
だって、あのしずくは目からじゃなく、鼻からたれたものなのだから・・・
うん? 昨日のコンパ?
そうそう、めっちゃ変なこ来たのよ。
カワイイの? うーーん微妙。
それより、そのこ、最初の注文から
「何もいりません」
って言って、ずっと水飲んでるの。
一次会何にも飲み食いせんまま、二次会よ。
そう、カラオケ。
そのこ、来るのよ。帰れよって思ったの、そしたら、急に歌い出して。
よーわからん、バラードやったわ。
歌い終わると、俺の目の前来て、
「歌どうでした? ワタシ才能あります?」
は? ってなるやん。
どうも、俺の事、よー知らんねんけど、音楽プロデューサーの誰かと勘違いしてたのよ。
やから、俺、「俺その人違うし、そんなんもわからんのやったら、自分諦めたほうがええで」
って言ったら、バッて帰っちゃったのよ。
ほんで、ああ大きな才能を潰してしまったかなと思ったよ。
カラオケの画面見たら、勝手に採点式になってて
点数、100点やったのよ。
見る目無いのは俺なのかもな。
え? ああ、耳ね。