「おはよう」
今日も、身体中の勇気をかき集めて言った。
「おはよう」
そう笑顔で返されるだけで、1日が色鮮やかに輝く。
ねぇ、気づいてる?
君のことが好きだってこと。
こんなこと言ったら“重い”って思われるかもだけど、
私が君のことを好きになることは、
最初から決まってたのかな。
“太陽はみんなを照らす”というけれど、
それは平等にではないと思う。
どんなに明るく照らされていても、
心の中は土砂降りの人や曇りの人もいる。
眩しく明るく照らされている人に、
わかったような顔はされたくないよ。
「今から家行ってもいい?」
恋人からの連絡が来たのは、お昼を食べて少しした頃だった。幸い、今日は部屋が整っている。
「うん、大丈夫だよ。待ってるね」
ゆっくりメッセージを打ち込み、送信ボタンを押す。恋人は画面を開きっぱなしにしているようで、すぐに既読がついた。
「お邪魔しまーす」
大きく膨らんだマイバッグを持ち、恋人が家に上がってくる。なに買ってきたの、と訊くと、自慢げに中身を紹介してくれた。
Netflixで映画を見ながら、恋人が買ってきたお菓子を食べる。付き合いが長いからお互いの好みがわかっているし、最近似てきつつもある。
「ねぇ。こうやってダラダラするの楽しいよね」
ポテトチップスで汚れた手を拭きながら、恋人が言った。丸めたティッシュが、綺麗にごみ箱に入る。
「そうだね 」
こういう日常が、ずっと続けばいいよね。
あなたの目が覚める前に、あなたに触れたい。
あなたが私を思い出す前に、お別れがしたい。
あなたと過ごした日々は、本当に幸せでした。
でも、もう一緒にはいられない。
きっとあなたを苦しめてしまうから。
身勝手でごめん。愛してしまってごめん。
お互いの幸せのために、さようなら。
窓の外を見つめる。
満開の桃色と、芽生え始めの緑が広がっている。
柔らかな風が吹き、木々が揺れた。
(もうそろそろかな)
ずっと待っていたあの人がやってくる予感がする。
あの葉っぱが落ちれば、きっと来てくれる。
気が付くと眠ってしまっていた。
耳もとで声がする。
「おまたせ」
私を待っていてくれるのは、あなただけだよ。